「レディなのに荒々しい」
『Z』とのデートの感想は?
それにしても、あまり世に出ていない最新型のセイランブルーの『Z』と漆黒色の『911カレラ』――。日産とポルシェ、それぞれの各社において「センター」でいることを運命づけられたのがこの2台の車が並ぶといやが上にも目立つ。
道行く人たちは、ある人は足を止めこの2台を見る。またある人はスマートフォンを取り出して撮影する。その様子はまるで不意に訪れた美人女優かイケメン俳優との路上での偶然の邂逅を楽しむ様を連想させる。
作曲家
そんな淑女『Z』との“デート”を終えたばかりの酒井にその印象を聞いてみた。
「名前にレディとついているのに荒々しい。実に男性的な車です。このいかつさ、なんでしょう。ベートーヴェンでしょうか」
小学校や中学校の音楽の時間に習ったであろうドイツの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1792年~1827年、56歳没)は、冒頭のジャジャジャジャーンというメロディで有名な交響曲『運命』、ピアノソナタ『悲愴』『月光』『熱情』の「3大ソナタ」などなど、激しい曲風で知られる。
このベートーヴェンに喩えられた『Z』と酒井の愛車911カレラは、言うまでもなくどちらもただただ“走り”を追求した車、本格的なスポーツカーだ。日頃、911カレラを駆る酒井の目から見て『Z』と911カレラの違いは何なのか。
「ポルシェが洗練されているとすれば『Z』は荒々しい。いいか悪いかは別にして暴れ馬みたいなそれ――」
淑女を意味する名を持ちながらも暴れ馬のような気性を露にする。相反する二面性を持つ。それが『Z』という車ならではの個性といったところか。
個性といえば、それが悪いということではないが、ともすれば日本の自動車メーカーが生み出す車すべてがその個性を前面に打ち出さない、没個性的なものという印象が強い。
対してポルシェなど欧州発の車は、それぞれの車、そしてメーカーのそれと強烈な個性を前面に押し出すという印象がある。
長く欧州での暮らしが長かった酒井も、日本の車には個性が見えないと考えていたという。