2期目のトランプ政権が
目論む「恐ろしい計画」

 トランプ氏は4月に行われたタイム誌とのインタビューで、「復権したら、大統領権限を拡大して、1期目の時に自分のやりたいことを実行するのを妨げたガードレールを外したいと思っている」と語った。

 具体的にトランプ氏が2期目にやろうとしているのは、気に入らない連邦政府職員を解雇しやすくするための法改正を行い、重要な職はすべて「アメリカを再び偉大にする」(MAGA)のスローガンを信じる人たちで固め、約1200万人もの大量の移民を強制送還し、LGBTQの権利保護や平等性・多様性・包摂性の推進などの連邦政府の政策を廃止し、黒人やアジア系などの有色人種を二級市民として位置づけ、白人キリスト教徒を中心とした「本当のアメリカ」(彼らいわく)をつくることなどである。

 トランプ氏が「白人のアメリカ」に強くこだわるのは、自身の政治家としての出発点がそこにあるからではないかと思う。

 米国では近年、黒人、ヒスパニック、アジア系など有色人種の人口が増え続け、2040年代半ばに白人は少数派になると予測されている。そのため、長い間支配的な立場にいた白人たちは少数派になることで、それまで維持していた「白人の特権(恩恵)」を失うのはないかと不安や恐怖を感じるようになった。 
 
 この彼らの不安に巧みにつけ込み、「アメリカを再び偉大にする」というスローガンを掲げて白人層の支持を広げ、2016年に大統領になったのがトランプ氏だったのである。実はMAGAには「白人のアメリカを再び偉大にする」というメッセージが隠されている、と筆者はみている。

 トランプ氏と彼の同盟者たちはすでに保守系シンクタンクと協力して、トランプ政権2期目に進める主要な政策の青写真「プロジェクト2025」を作成している。

 これには司法省の独立性を排除して、トランプ氏に忠実な人物を司法長官に任命し、組織全体を大統領の権限の下に置く計画も含まれている。司法省を大統領の支配下に置けば、仮にトランプ大統領が2期目で違法行為を行ったとしても、刑事訴追を免れる可能性が高まるというわけだ。

 公共政策が専門のドナルド・モイニハン教授(ジョージタウン大学)は、「これは米国政府にとって、1880年代に官僚体制が創設されて以来最大の変化である」と述べた上で、こう警鐘を鳴らした。

「米国政府における腐敗やリスクが増大すると思います。トランプ氏は闇の政府についてよく語っていますが、この計画は行政機関に対するより直接的な統制を正当化するために、他国の権威主義者たちがやりがちなことと大変よく似ています。そこには危険なパターンがあり、政府の質を低下させるだけでなく、政治権力乱用の扉を開けることにもなります」(PBSニュースアワー、7月9日)。

 プロジェクト2025を起草したヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長は、「我々は第2次アメリカ革命の過程にある。左派がおとなしくしていれば、流血の事態にはならないだろう」と語っている。