連邦最高裁がトランプ氏に
「独裁へのかぎ」を手渡す

 独裁体制の構築をめざすトランプ氏にとって大きな追い風になると思われるのは、最上級の連邦裁判所である連邦最高裁判所が7月1日に、「大統領在任中の公務としての行動は免責される」というトランプ氏の主張をほぼ全面的に認める判決を下したことだ。

 現在の連邦最高裁は9人の判事のうち6人が保守派で占められているため(そのうち3人はトランプ氏が1期目に指名した)、トランプ氏に有利な判決を下すケースが増えている。

 今回、大統領の免責特権が認められたことで、トランプ氏が抱える3つの刑事裁判の公判が11月の大統領選の後になる可能性が高まっただけでなく、トランプ氏が2期目に罪を犯しても刑事責任を問われない可能性が出てきた。

 そのため、3人のリベラル派判事は強く反対し、ソトマイヨール判事は次のような声明を出した。

「今回の判断は大統領という制度の形を変え、大統領を法の上に置くものだ。保守派判事の考えが色濃く反映されたこの判断では、どのように大統領が権力を使おうと刑事訴追を免れることになる。仮に海軍の特殊部隊に政敵の暗殺を命じたとしても免責、権力の座にとどまるために軍事クーデターを起こしても、免責、賄賂と引き換えに恩赦を与えても免責。免責、免責、免責。私たちの民主主義を憂慮しつつ、私は異議を唱えます」

 また、大統領権限に関する研究を行っている歴史家のマギー・リチャードソン教授(ボストン大学)も、「この判断は従来の憲法に基づくチェック・アンド・バランス(政治権力が特定部門に集中するのを防ぐために、権力相互間で抑制と均衡を保たせること)の機能を損なう危険性があります。それが何を意味するのか、人々は必ずしも理解していないと思います」と、深刻な懸念を示している。

 この判決が出た直後、トランプ氏は「憲法と民主主義にとっての大きな勝利だ」と、勝ち誇ったようにSNSに投稿した。

 これに対し、バイデン大統領は「最高裁はドナルド・トランプに独裁へのかぎを手渡した」と厳しい言葉で非難し、「この選挙の行方はさらに重要になってきた」と国民に投票を呼び掛けた。