「早く出せよ!」「覚えてらっしゃい!」新紙幣発行でメガバンクに殺到した高齢者たち、その「あきれた要求」とは?窓口担当者が怒らせてしまったお客をなだめるのが上手い百戦錬磨の行員がお手上げに?高齢男性の要求とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「早く出せよ、ほら!」
店内で響く男性の声

「分かっとるんだぞ!お前さんたちがウソをついているって。そんな見え透いた口車に誰が乗るかといってんだ!早く出せよ、ほら!」

 窓口カウンターで、男性の声が響く。トラブルのようだ。セリフは銀行強盗がよく言うそれに近い。ただならぬ予感がした。

「なんで怒ってる?3番窓口のおじいさんは」

 隣に座る課長代理の山川さんに尋ねると、

「『お金があるに決まってる』『ないわけがない』とか何とか聞こえましたけど…。ちょっと行ってみます」

「うん、相手が落ち着かない様子なら早めに応接室に移ってもらおう。僕が対応するよ」

「その時はお願いします」

 山川さんは、窓口担当者が怒らせてしまったお客をなだめるのが上手い。私が10年以上この職務に就き、部下を見てきた中で、最も安心して見ていられる。

「どうぞ、こちらへ!」