「早く出せよ、ほら!」
店内で響く男性の声
「分かっとるんだぞ!お前さんたちがウソをついているって。そんな見え透いた口車に誰が乗るかといってんだ!早く出せよ、ほら!」
窓口カウンターで、男性の声が響く。トラブルのようだ。セリフは銀行強盗がよく言うそれに近い。ただならぬ予感がした。
「なんで怒ってる?3番窓口のおじいさんは」
隣に座る課長代理の山川さんに尋ねると、
「『お金があるに決まってる』『ないわけがない』とか何とか聞こえましたけど…。ちょっと行ってみます」
「うん、相手が落ち着かない様子なら早めに応接室に移ってもらおう。僕が対応するよ」
「その時はお願いします」
山川さんは、窓口担当者が怒らせてしまったお客をなだめるのが上手い。私が10年以上この職務に就き、部下を見てきた中で、最も安心して見ていられる。
「どうぞ、こちらへ!」