終電ギリギリまで残業しているのに仕事が終わらない人と、必ず定時で帰るのに成績No.1の人。この差は一体何だろう? 努力が成果に反映されない根本的な原因はどこにあるのだろうか? そんなビジネスパーソンの悩みを本質的に解決してくれると大注目なのが『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。
著者は、東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏だ。
前回から、本書の発売を記念し、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みをぶつける特別企画がスタートした。経営の最前線で20年以上、成果を上げられる人と上げられない人の差を徹底研究してきた木下社長にロングインタビューを実施。第2回目は、「仕事が異常に遅い人」の特徴とその対処法について、教えてもらった。(構成・川代紗生 初出:2023年1月1日)
【仕事が「異常に遅い人」の習慣1】後でじっくり考える
──あけましておめでとうございます。『時間最短化、成果最大化の法則』には、生産性を上げる方法も書かれていて、とても参考になりました! いつも残業してばかりで、仕事が人並外れて遅い、という人は、まずは何から改善すればいいでしょうか。
木下勝寿(以下、木下):まず、やめたほうがいいのは、「後でじっくり考えよう」という思考アルゴリズム、つまり、考え方のクセですね。
仕事が遅い人には、「きちんと考えないと、いい仕事はできない」という思い込みがあります。
実際は、判断に必要な思考時間は、長くても60~120分程度。
普段の仕事なら、せいぜい10分もあれば十分だと思います。
でも、仕事が遅い人は、実業務に取りかかるまでのアイドルタイムが異常に長い。
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木下:本当に脳みそを研ぎ澄まして真剣に考えている時間は10分くらいしかないのに、2、3時間かかるものだと思い込んでいる。
実は、成果の差は、実業務をこなすスピードではそれほど生まれません。
──言われてみれば、息抜きのためにボーッとする時間、考えがまとまらずにうじうじする時間も含めて「思考時間」として見積もってしまっていた気がします。
木下:たとえば、打ち合わせをした後、「一度持ち帰って検討します」という人は多いですが、これも実は、打ち合わせ中に決めようが、後で考えてから決めようが、答えは変わらないんです。
むしろ打ち合わせ中に、相手も含めて判断してしまったほうが確実。
でも、仕事が遅い人は「後でじっくり考える」ことを前提に行動しているので、本当は打ち合わせで完結したはずの仕事に、2、3時間かけたりする。
──ああ、あるあるですね……。
木下:それがわかっている人は、打ち合わせの最中に相手と確認しながら全部決めていくので、早ければ5分ですみます。
打ち合わせが終わった直後に取りかかれるのですぐに成果が出ますが、「2、3時間かかる」と思い込んでいる人は、まとまった時間を確保しようとするので、3日後、1週間後、人によっては1か月後など、どんどん後ろ倒ししてしまう。
これが蓄積すると、圧倒的な差になってしまいます。
仕事が遅すぎて悩んでいる人は、「じっくり考えている2、3時間のうち、本当に集中して検討しているのは10分間しかないんだ」と気づくことが、まずは大事だと思います。
【仕事が「異常に遅い人」の習慣2】情報がないまま判断する
──毎回の仕事を、「究極の決断」かのごとく、ぐるぐると悩みすぎてしまう人は、どう改善したらいいでしょうか。
木下:そうなるのは、情報量が少ないまま、結論を出そうとするからです。
たとえば、爆弾を解体しなきゃ! というとき、赤い線と青い線、どちらを切るべきか、全く情報がないまま決めるとしたら、それは運任せで決断するしかない。
本当は、赤い線と青い線がどうつながっているのか、分解して一つひとつ見ていったら、「どちらを切ればいいのか」のベストな結論が出てくるはず。
なのに、「決断できない」と悩む人は、分解せずに決めようとするんです。
──なるほど。
木下:きちんと情報収集をせず、爆弾が手元にない状況で、いくらじっくり考えても、成功確率の高い答えが出るわけがありません。
仕事が速い人は、打ち合わせで「爆弾を解体します」と言われた段階で、「今、こうつながってますが、外して大丈夫ですか?」「ここは切っても問題なさそうなので、切りますね」など、必要な情報をその場で相手に確認しながら分解します。
──そうですね。爆弾が手元にない状態で3時間悩み続け、後から「打ち合わせで聞いておけばよかった」と後悔する、みたいなこと、多い気がします。
木下:そうそう。「答え」とは、情報収集すれば、自動的に判断できるもの。
情報を集めて論理的に考えれば、確率論である程度の答えは導き出せる。
その前提を持っているかいないかで、仕事のスピードは格段に変わります。
【仕事が「異常に遅い人」の習慣3】覚える
──他には、やめたほうがいい習慣はありますか。
木下:「覚えること」をあきらめたほうがいいです。
仕事が遅い人ほど、記憶に頼りがちですから。
──覚えることをあきらめようって、『時間最短化、成果最大化の法則』にも書かれていました。私はむしろ、「なんで覚えられないんだろう?」と思うことが多かったので、最初に読んだとき、すごく驚きました。
木下:くわしくはこの本にありますが、私はたぶん、スマホがなくなったら本当に何もできない人間になります(笑)。全案件をスマホにメモ化、アラート化するようにしていますから。
──どのくらいのレベルのことまで「忘れる」んですか?
木下:「10分以上、手がつけられない作業はメモする」というルールを設けています。
「10分以上、記憶は持たない」と考える。
──10分ですか! ほとんど全部ですね。
木下:でも、合理的に考えれば、「記憶する」という機能は、機械で代替可能なんです。
それに自分の脳を疲弊させるのをあきらめ、空いたリソースをすべて「思考する」ことに集中させることにした。すると、抜け漏れがなくなり思考に集中でき、人の10倍、仕事できるようになりました。
──なるほど。仕事が遅い人は、記憶することに多くのリソースを使ってしまっているから、他の肝心な作業に割けないのかもしれませんね。
木下:たとえば、「10分後に取引先に電話をかけ直さなきゃ」というタスクがあるだけで、集中力は落ちます。
チラチラ時計を見ながらやっていると、その10分間の仕事の精度は下がってしまう。
スマホで10分後にアラームが鳴るセットをすれば、「安心して忘れる」ことができ、脳の容量に空きをつくれる。
そのために、私はメモやタスクツールなどを駆使しているんです。
最後に、おさらいすると、「仕事が異常に遅い人」は、3つのクセをやりがちです。
【今すぐやめるべき3大習慣1】後でじっくり考える
【今すぐやめるべき3大習慣2】情報がないまま判断する
【今すぐやめるべき3大習慣3】記憶に頼る
今日からこの習慣を撲滅するだけでも、同じ時間で数倍の成果を出せるようになると思います。
本稿のテーマ「同じ時間で150倍の成果を出す方法」についてもさらに詳しく解説していますので、ぜひ本書を片手にトライしてみてください。
(本稿は、『時間最短化、成果最大化の法則』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)