宇田川南欧 バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長Photo by Masato Kato

2024年6月、政府が2033年にゲーム・アニメなどのコンテンツ産業を20兆円の海外市場に成長させるという戦略を発表した。IP(知的財産)をどう活用すればいいのか。多数のヒット作を持つバンダイナムコグループを支えるバンダイナムコエンターテインメントの宇田川南欧社長に話を聞いた。後編では、鉄拳やアイドルマスターなど長寿IPが誕生した秘話を語ってもらった。(ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)

>>前編から続く

エンタメ業界が発展する鍵は?
鉄拳シリーズから学んだ開発の肝

――エンターテインメント業界がさらに発展するためには、何が必要だと思いますか?

 エンターテインメント業界では、よく「シェア争いは重要ではない」といわれています。人々は自分の好きなコンテンツが出てくれば、それを楽しみます。同時に、他の人は別のIPやコンテンツを楽しむことができます。

 現在、エンターテインメント業界だけでなく、全てのビジネスにおいて、お客さまの時間をどのように使ってもらうかが大きな課題となっています。

 その中で重要なのは、お客さまに飽きられないことです。ニュース性のある情報や新しい商品を通じて、常に驚きと楽しみを提供し続けることが、ビジネスの本質だと考えています。つまり、競争よりも、いかに継続的に魅力的なコンテンツを提供できるかが重要なのです。

――そんな中、「鉄拳」シリーズがファンに飽きられることなく、長く愛されています。成功の要因についてお聞かせください。

 鉄拳シリーズは1990年代にゲームセンターなどにあるアーケード機器から始まり、家庭用ゲーム機に主戦を移行する方針を採りました。その後もF2P(Free to Play)へのトライアルなどさまざまなチャレンジを行ってきました。

 前作「鉄拳7」ではゲーム市場のGaaS(Games as a Service=ゲームのサービス化)が定着しつつあり、ダウンロードコンテンツや無料アップデートの提供により9年にわたる展開を行いました。そして最新作の「鉄拳8」ではこれを進化させ、長期間のサービス提供を前提としたプロダクト設計と運営体制づくりを行っています。