ゲームIPの枠を超えて
進化し続けるアイドルマスター
――アイドルマスターが2025年で20周年を迎えます。一つのIPがここまで長く支持されてきた秘訣(ひけつ)を教えてください。
「アイドルマスター」シリーズはアミューズメント施設向けゲーム機からスタートしたアイドルプロデュースゲームです。日本国内で非常に強い支持を受けており、ファンの方に「プロデューサー」になっていただき、共にIPを育ててきました。
このIPは多岐にわたる展開をしてきました。アミューズメント施設から始まり、スマートフォンゲーム、家庭用ゲーム、さらにはライブイベント、楽曲、アニメ、映画、ラジオ、グッズなど多岐にわたります。単なるゲームIPを超えて、社会的な影響力や地域貢献活動にも積極的に関わる存在として成長しており、それが支持されてきた要因だと思います。
開発者によれば、誕生のきっかけは“女の子からメールが届く”というアイデアが先にあり、そこから「女の子」+「育成・成長」=「アイドル」とテーマが決まったことだそうです。
多くの人が携帯電話を持ち始めた時代で、「メルマガを送ってゲームセンターに人を呼ぼう」というアイデアが出ました。その際、ただのメルマガだとつまらないため、ゲームに登場する女の子のキャラクターからのメールにするという案がありました。当時は育成や成長という要素がヒットしたゲームが多かったため、それらの要素をふまえ、テーマをアイドルに決めました。
競争し、みんなでトップを勝ち取っていくという流れが全国オンラインゲームに合いそうという予感が、当時の社内にありました。内容的には、トレーニングをして歌を歌うことでゲームを進めるというのはほぼ決まっていたため、それをどう現実化するかを模索していました。
そしてアイドルバトルの仕組みが見えたタイミングで、一気にゲーム化が進んだという経緯があります。
――最近はアイドルマスターで、どんな取り組みをしていますか?
MR(Mixed Reality)ライブを行っており、声優さんがキャラクターに声を当てるだけでなく、3Dデータを投影してリアルなライブパフォーマンスを実施しています。これが人気を博しています。
例えば、バンダイナムコグループのIPである「ラブライブ!」のアイドルと「アイドルマスター」のアイドルが東京ドームで共演するという大規模なライブイベントも実施しています。こうした取り組みで異なるIPのファン同士が交流する機会は増えており、非常に興味深い現象です。
最近リリースした「学園アイドルマスター」も好評で、2週間弱で100万ダウンロードを達成し、ランキングでも1位を獲得しました。アイドルマスターシリーズが20周年を迎えるにあたり、今後も続けて楽しんでいただけることを目指しています。
―――アイドルマスターのアイドルたちが地域活動に参加しているとのことですが、どのような活動をしているのでしょうか?
PR活動の一環としてアイドルが地域イベントに参加したり、コラボレーション商品を作ったりしています。また、それぞれのキャラクターの出身地に関連したグッズの製作やコラボ企画に携わることで地域おこしにも貢献しています。
最近では、防災訓練イベントでアイドルが救命講習会を実施し、心臓マッサージの練習をするという活動があります。主催者からは、「アイドルの力を借りて多くの人を集めることができ、非常に貢献してくれました」との声をいただいています。
さらにアイドルマスターの防災グッズも製作し、ファンの方々がそれを持ち歩くことで防災意識を高めることができるようになっています。
――ファンの協力が非常に大きいですね。
本当にファンの支えによって、ここまで成長できたと実感しています。
他にサステナビリティー活動の一環で、ライブ会場で不用衣服を回収し、それを素材にしてアイドルのパネルを作成しました。ライブ中のマイボトル持参呼びかけも行い、参加者の90%が持参してくれたようです。こうした活動を通じて「ファンと一緒に盛り上げるIP」という感じが強まっています。
――バンダイナムコエンターテインメントの今後の展望について教えてください。
ゲーム事業を中心としつつも、他のエンターテインメント事業も伸ばしていきたいと考えています。
例えば、アイドルマスターにおいては、自社IPを多角的に展開することで、新しいファン層を取り込むことが目標です。5年前はゲーム事業が全体の70%を占めていましたが、今期は60%になり、逆にゲーム以外の事業が40%を占めるようになりました。ライセンス事業やイベント物販などが伸びています。さまざまな事業に展開することで、さらなる成長を遂げているのです。今後は売り上げを伸ばしながら、ゲーム事業とそれ以外の事業の比率を5対5にしていければと考えています。
やはりBNEとしては、主軸となるゲーム事業において、多角的な視点を踏まえた最適なタイトルポートフォリオをもとに戦略的に展開し、着実に作り切る力、そしてタイトルを長く売り伸ばす力の強化に注力していきます。