四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏の著書『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』から一部抜粋して、同氏の営業ノウハウをお届けします。今回のテーマは「客先で部下を叱ること」について。
「あんたどういうつもり?」
寿司屋「すし安」から恐怖の電話
すし安は頑固を絵に描いたような主人とそれに負けないくらい気の強い奥さんがやっているお寿司屋さんです。以前から私たちをひいきにしてくれており、店の駐車場にはもう何代目かの自販機が設置されています。
しかし、少々気難しいところがあり、出入りの業者の言葉遣いや商品の扱い方、訪問した時のクルマの停め方など気に入らないことがあると、凄い剣幕で怒られます。
業者同士でよく話をするのですが、どのあたりが怒りの引き金になるのかよくわかりません。こちらは普通に話しているつもりでも、突然へそを曲げたりするのでなかなか厄介です。
今日は一日中雨でした。びしょびしょに濡れながらのルート回りを終え、事務所で日報を書いていると、「おーい、電話だぞ」と私を呼ぶ声が聞こえます。「はいはい」と受話器を取るとすし安の奥さんからです。「はて、なんだろう。昼過ぎにお伺いして注文の商品を置いてきたばかりだけど」と思いつつ、用件を伺います。
「主人が凄く怒っているのよ。私も同じだけど、あんたどういうつもり?」
一気に背筋が凍り付きます。
「何をやっているのよ。雨に濡れた箱もあるし、床がびしょびしょじゃない。ちょっと店まで見に来なさい」
怒られるようなことをしていないし、納品した商品も濡らさないように運んだので、クレームになるようなことはないはず。状況を飲み込めません。でもまずはお店に伺わざるを得ない状況です。受話器を置くと思わずため息が漏れ、天井を仰ぎます。
「どうした、深刻な顔をして」
電話のやり取りの様子を横で見ていた土居さんです。