英語力に自信があり、大学ではEMI実施学部(EMI:English-Medium Instructionの略。人口の大多数の母語が英語ではない国や地域で、英語を使って教科を教えること)へ進学した、のぞむ、あすか、じゅん、みずき。4年間、英語で授業を受けてきた彼らが社会に出たときに共通して直面した“言語の壁”とは。本稿は、佐々木テレサ 福島青史『英語ヒエラルキー グローバル人材教育を受けた学生はなぜ不安なのか』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
「返事してください」の
日本語が出てこない
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EMI実施学部の卒業生の全員に共通していた日本語の問題点は、〈アウトプットが苦手〉ということだった。相手に何かを伝えたいときに、適当な日本語が出てこないのである。彼らには、〈日本語が出てこない〉〈英語が混ざる〉という現象が起こっていた。つまり、言葉に詰まってしまったり、日本語の単語が英単語に置き換わってしまうのだ。
みずきの場合、物の名前の日本語発音が分からないそうだ。英語の発音に置き換わってしまい、なんと言えばいいのか分からないらしい。帰国子女にありがちな言語の問題でもある。
帰国子女でないのぞむの場合も、日本語のアウトプットに問題点があった。英語が先行してしまい、日本語が出てこないという。
のぞむと同様に、単語が英語に置き換わる、日本語が出てこないという現象は、EMI実施学部の卒業生全員に共通していた。あすかは、とっさに日本語の単語が出てこないことがあるという。
あすか:もう1回メール出してやろうと思って、メールしたときに、「今日の午前中までに返事してください」って言いたかったの、私。でもそれをなんて言ったらいいか分かんなくて。なんか今日の午前中までにリアクションしてくださいって(笑)。(リアクション)しか思い浮かばなくって。それで送ったことはある。最近。そう、なんて言うのが(正しかったのか)、返事?返事も思い浮かばなくて、リアクションしてくださいって送っちゃった。