英語の冒頭が「I am」ばかりになる問題、ネイティブスピーカーはどうしているのか?写真はイメージです Photo: Maskot/gettyimages

新年度が始まり、就職や異動などで環境が変わった方も多いのではないでしょうか? 初対面の人とお互いを知るための会話をする機会もたくさんありそうです。英語の参考書などに、「初対面での英会話」というテーマで定型文が紹介されているのを見たことがありますよね。でも、実際のコミュニケーションでは必ずしも定型通りにならず、「こういう場合は何と言ったらいいの?」と戸惑ってしまったことはありませんか? ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなどの同時通訳を務めてきた田中慶子さんが、ご自身の経験をもとに、初対面の人と英語でコミュニケーションする際に知っておくと便利なフレーズや使用方法をご紹介します。

「現在住んでいる場所」と
「出身地」が違う場合の表現

英語の冒頭が「I am」ばかりになる問題、ネイティブスピーカーはどうしているのか?田中慶子(たなか・けいこ)
同時通訳者、Art of Communication代表。ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾IT担当大臣などの通訳を経験。「英語の壁を乗り越えて世界で活躍する日本人を一人でも増やすこと」をミッションに掲げ、英語コーチングやエクゼクティブコーチングも行う。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』(KADOKAWA)、『新しい英語力の教室 同時通訳者が教える本当に使える英語術』(インプレス)。

 さまざまな国籍の人が集まる場で自己紹介をするとき、

“My name is Keiko Tanaka. I am from Japan.”
(田中慶子です。日本から来ました)

 というように、“I am from 〜”の後に自分の出身地を述べることが多いと思います。“I am from 〜”は、直訳すると「〜から来た」ですが、「〜出身」という意味も含みます。

 でも、「出身は日本だけど、今はアメリカに住んでいる」という場合は、どうすればいいのでしょうか?。

 実際、私がアメリカに住んでいるときにこうしたことがありました。自己紹介で“I am from Japan.”と伝えると、「普段は日本に住んでいて、今はたまたまアメリカを訪れている」と勘違いされたまま会話が進み、「長旅でしたね」「今、日本では何が話題になっているの?」と言われ、話がかみ合わなかったことがあります。

「現在住んでいる場所」と「出身地」が違う場合には、

“I am originally from Japan but now I am based in the US.”
(出身は日本ですが、今はアメリカに拠点を置いています)

 のように、出身地を“originally from 〜”、いま住んでいる場所を“now I am based〜”と表現するといいでしょう。

 また、昨今はオンライン会議など、普段とは別の場所から会議に参加するケースも珍しくありません。そのようなときには

“Right now, I happen to be in 〜 for a business trip.”
(今は、たまたま出張中で〜にいます)

 と言ったりします。“Right now,”と前置きすることで、「今は」ということを強調した上で、「たまたま〜にいる」、つまり「いつもいるわけではない」というニュアンスを“happen to be”で示す表現方法です。

 英語圏でコミュニケーションの上級者を観察していると、会話の中で相手の名前を呼びかけていることが多いのに気づきます。親しみを込めるためのちょっとしたテクニックですね。新しい環境でも、いち早く相手の名前を覚え、名前で呼びかけることで、相手との距離はグッと近くなりそうです。

 ただ、相手の名前の読み方や発音がわからずに、戸惑うこともあるかもしれません。