日米金利差の縮小が意識され始めたことで、今後注目を集めそうなドルから他通貨への投資対象の切り替え。外貨投資の際には、金利だけでなくその国の情勢や通貨の特性を見極める必要がある。高金利通貨で人気のメキシコペソと、ブラジルレアルの現状と見通しを検証する。(ミンカブソリューションサービシーズ外国為替情報担当編集長 山岡和雅)
【メキシコペソ】
トランプリスクでも人気継続
中国リスク小、消費支える出稼ぎ送金
高金利通貨の中で最も人気があり、今後の期待も高いのがメキシコペソだ。
メキシコペソ円は今年5月に2008年10月以来となる9円台半ばに達した。コロナ禍の20年4月から、わずか4年で2倍以上の上昇だ。メキシコペソは対ドルでも約9年ぶりのペソ高となるなど、ペソの上昇は目立っている。
メキシコペソが買われる材料として指摘されるのがニアショアリングの動きだ。ニアショアリングとは、企業が本拠地や最終消費地から地理的に近い国や地域に事業を移転したり、アウトソーシングをしたりすることだ。
近年、自動車を中心とした米国の製造業は地理的に近いメキシコに生産拠点を移転させる傾向がある。メキシコは天然資源輸出への依存度が高い他の中南米諸国と違い、製造業などを背景に安定的な成長を続けている。メキシコ景気の中長期的な発展が期待され、世界の投資資金がメキシコへ流入し、ペソ高が進行した形だ。
しかし6月、メキシコ大統領選挙をきっかけに、メキシコペソは大きく調整した。ペソ円は選挙後の2日間で9円台前半から1円下落し、一時11%安を記録した。
大統領選ではロペス・オブラドール大統領の後継候補となったクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長が勝利。議会選挙でも左派系の与党が大勝した。この結果、市場では憲法改正を目指す与党勢力が拡大したことで、ポピュリズム色の強いオブラドール路線が加速し、財政赤字が拡大するとの懸念が強まった。
ただし、その後、メキシコペソは買い戻しの動きが続いた。シェインバウム次期大統領が財政規律に厳しいラミレス財務・公債相の続投を表明したことで、市場の警戒感が後退したからだ。
10月から始まるシェインバウム政権への過度な懸念は後退したものの、もう一つ無視できない政治リスクが「もしトラ」である。