ブラジル中銀は利下げ継続でもタカ派寄りに修正、「レアル安」で迫られる緩和ペース鈍化Photo:PIXTA

景気減速とともに、インフレ率も低下してきたブラジル経済。中央銀行は昨年8月以降利下げに転じた。しかし、ここにきて米国の利下げが後ずれするとの観測の強まりもあり、ドル高レアル安が進行、緩和ペースの鈍化を迫られている。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

大幅利上げでインフレ抑制
昨年8月以降利下げに転じる

 ここ数年のブラジル経済は、度重なる歴史的大干ばつに加え、商品高や米ドル高による通貨レアル安に伴う輸入物価上昇やコロナ禍一巡による経済活動の正常化も重なり、インフレが大きく上振れした。

 こうした事態を受けて、中央銀行は2021年3月以降に物価と為替の安定を目的に累計11.75%もの大幅利上げに動くなど急進的な金融引き締めにかじを切った。しかし、その後もインフレは高止まりする展開が続いた。物価高と金利高の共存が幅広い経済活動の足かせとなる懸念が高まった。

 しかし、一昨年末以降は商品高と米ドル高の一巡も追い風にインフレは頭打ちに転じたため、中銀は昨年8月に利下げにかじを切った。先月の定例会合まで累計3%の利下げを実施するなど、景気に配慮する姿勢をみせている。

 ただ、ここにきて中銀の金融緩和のペースが鈍化しそうである。その背景を次ページ以降検証する。