ドルではない「高金利通貨」が人気に?主要11通貨の金利・為替変動リスクを総点検Photo:PIXTA

日本銀行が7月31日の金融政策決定会合で追加利上げを決定するなど、日米金利差の縮小とトランプ氏のドル高是正路線が意識され始めたことで、ドルから他通貨に投資対象を変える動きが強まりそうだ。主要11通貨の金利・為替変動リスクを総点検した。(ミンカブソリューションサービシーズ外国為替情報担当編集長 山岡和雅)

低金利不満に円資産価値下落への警戒感
海外資産の人気が急上昇

 新NISAで全世界株式(オルカン)が人気化するなど、海外へ資金を向ける動きが近年急速に広がっている。公募投資信託での外貨建て純資産総額は80兆円を超え、この2年で1.8倍以上となった(下図参照)。

 こうした海外投資ブームの背景には、日本の低金利への不満と、円安進展による円資産価値の下落への警戒感がある。日本よりも高い金利を求め、円安による資産価値下落を防ぐには、外貨預金や外貨MMF、FXといった外貨建て投資が一般的だ。

 これまでの外貨建て投資は、米ドルを対象としていれば事足りた。米国の政策金利は5%台半ばと日本よりも5%以上高く、長期(10年)債利回りも4%台前半と高水準だ。また米ドルは対円で一時162円近辺と約37年半ぶりの高値を記録した。この歴史的なドル高円安によって、米ドル建て資産の価値は大きく膨らんだ。

 しかし、こうした状況に変化が生じている。米国ではインフレが鈍化して労働市場でも需給の緩みが目立っており、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始をほぼ確実視している。

 米国経済の状況次第とはいえ、米国で年内に3回の利下げがなされる可能性も指摘されている。市場の見方が現実となれば、日本と米国との金利差は急速に縮小することになる。

 さらに11月の米大統領選挙の有力候補であるトランプ前大統領は、ドル高円安に強い懸念を示している。米製造業を支援する姿勢が強いトランプ氏にとって、輸出にマイナスなドル高を是正しようとする意識が強いのは自然なことだ。

 一方、日本では金利がまだまだ低く、外貨建て投資のニーズが大きく後退するとは考えにくい。

 おそらく今後は、米ドルの金利低下やドル高けん制姿勢の強まりを懸念し、外貨建て投資の対象を米ドルから他通貨に代える動きが強まると思われる。

 特に日本人投資家の高金利好きな姿勢を考えると、今後、注目が高まるのは、いわゆる「高金利通貨」であろうと予想される。次ページでは、日本人に人気の高金利通貨など主要11通貨の金利・為替変動リスクや通貨の特性、今後の見通しを検証していく。