
山岡和雅
2025年上期の為替市場では、スイスフランやユーロを押しのけ、スウェーデンクローナが対ドル上昇率でG10通貨トップに立つという“サプライズ”が起きた。景気減速や利下げといった通常なら通貨安要因とされる国内環境を抱えながら、なぜスウェーデンクローナはこの半年で最も強い通貨となり得たのか。背景には米国依存の低さや欧州再軍備という地政学的トレンドが密接に絡んでいる。上期のスウェーデンクローナ相場を押し上げた構造的要因を詳述する。

2025年に入り、米国の通商政策を巡る不透明感が金融市場を揺らし、ドルは主要通貨に対して全面安となった。かつて「世界の基軸通貨」として君臨していた米ドルから投資資金が流出し、安全資産へのシフトが進む中、注目されているのが「円の変質」と「スイスフランの台頭」だ。従来、安全資産としてリスク回避時に買われていた日本円だが、最近の国債入札の不調や財政懸念を背景に、信認の揺らぎが指摘され始めている。金や米国債と並んで「安全資産」として扱われてきた円の立ち位置が、なぜ変わりつつあるのか、その背後にある市場メカニズムや投資行動の変化を掘り下げるとともに、スイスフランの上昇基調が続く中での留意点を検証する。

世界経済の先行き不透明感が強まる中、ユーロが対ドルで約3年半ぶりの高値をつけた。ユーロ圏経済の低成長やトランプ政権の関税強化にもかかわらず、ユーロが買われている背景には、ドルへの信認低下という構造的な問題がある。特に注目すべきは、ドルの地位を脅かしかねない「マールアラーゴ合意」構想や、トランプ政権の強硬な通商姿勢に対する市場の不信感である。リスク回避の資金がユーロへ向かう理由を明らかにし、ドルの代替通貨としてのユーロの存在感が静かに、だが確実に増しているのかを論じる。

ユーロは一時、1ユーロ=1ドルのパリティ割れが視野に入る水準まで下落したが、ドイツの政権交代と財政政策の転換を受けて反発した。だが、この上昇が持続的なユーロ高トレンドの始まりなのか、それとも一時的な買い戻しに過ぎないのか、市場には疑問が残る。ドイツの債務ブレーキ修正は構造改革への期待を呼び起こした一方で、政党支持率の不安定さと米国による高関税リスクという二つの懸念がユーロの先行きを左右しうる。ドイツの新たな財政政策の中身とその政治的背景、さらにユーロ相場に影響を与える国際要因を分析し、ユーロの持続的な回復の可能性と再びパリティに向かうリスクの両面から検討する。

トランプ政権のメキシコへの関税発動が市場に不透明感をもたらし、メキシコペソは昨年後半から下落基調が続いている。米国への輸出依存度が高いメキシコ経済にとって、関税の影響は大きく、景気減速の懸念が強まっている。さらに、メキシコ中央銀行は利下げ姿勢を強めており、高水準の政策金利が緩やかに引き下げられる中で、メキシコペソの行方に注目が集まっている。メキシコ経済の現状とメキシコペソの動向を整理し、今後のリスク要因や投資の可能性について分析するとともに、関税政策の影響と金利動向が交錯する中で、メキシコペソはどのような展開を迎えるのかを考察する。

2025年の為替市場は第2期トランプ政権の誕生とともに不安定な相場展開が予想されるが、投資家にとっては新たなチャンスとリスクが提供されているともいえる。英国の増税政策や景気後退の懸念、米英金利差の縮小がポンド安の材料となる可能性、不安定な市場環境下での投資リスクの分散や有事のドル買い戦略の重要性を中心に分析するとともに、トランプ大統領の政策や世界経済の動向を背景に英ポンドの下落が期待される理由と具体的なトレード戦略を解説する。

2024年の為替市場は米ドル独歩高の展開だった。円の弱さが注目された日本だが、実はその円以上に下落した主要通貨がニュージーランドドル(NZドル)だ。一方で、2024年に意外な強さを示したのが南アフリカランド(ランド)。本稿では、円以上に弱いNZドルと意外な強さを見せたランドに焦点を当て、その背景にある政治的・経済的要因を掘り下げていく。また、米ドルの強さが続く中で、2025年の両通貨の先行きを考察する。

#30
日本の低金利への不満と、円安による円資産価値の下落への警戒感から、日本よりも高い金利を求めた外貨建て投資のニーズは根強いだろう。そして米国が利下げに転じたことで、米ドルではない高金利通貨への関心が高まりそうだ。2025年に注目の高金利通貨について、予想レートと見通しを解説する。

米大統領選でのトランプ氏勝利と「トリプルレッド」で為替市場は再びドル高・円安の「トランプラリー」が進行中。米大統領選後の為替市場の動向を詳細に分析し、ドル円やユーロ、ポンド、さらには人民元やメキシコペソといった主要通貨の影響を解説し、トランプ政権が経済政策に与える影響や、日本国内の金利政策との関係についても触れる。

豪ドルとNZドルは、ともに金利水準が高く、オーストラリアとニュージーランドが地理的に近いことから一括りにされがちだ。しかし最近は、両通貨に大きな変化が出てきており、結果として投資機会が生まれている。オーストラリアとニュージーランドの金融政策や中国景気が与える影響といった点で両通貨の違いを明らかにするとともに、日本人投資家ではすぐには思いつかない通貨ペアに注目すべき理由を解説する。

9月の米利下げ開始が確実視され、イングランド銀行(英中銀)が利下げを開始したにもかかわらず、8月に英ポンド高の動きが目立っている。ポンド高の背景として英米の金融政策と政局の2つの違いを指摘し、日本の投資資金が新興国通貨ではなくポンドに向かう可能性を展望する。

日本銀行のサプライズ利上げや近づく米国の利下げ、さらにドル高けん制姿勢の強まりを懸念し、米ドルではない「高金利通貨」が注目を集めそうだ。豪ドル、トルコリラ、南アフリカランドの高金利3通貨の見通しとリスクを展望する。

外貨投資の際には、金利だけでなくその国の情勢や通貨の特性を見極める必要がある。主要な高金利通貨について、現状と見通しを検証していく。まずは人気のメキシコペソからだ。

日米金利差の縮小とトランプ氏のドル高是正路線が意識され始めたことで、ドルから他通貨に投資対象を変える動きが強まりそうだ。主要11通貨の金利・為替変動リスクを総点検した。

メキシコ大統領選では改憲の意向を示すシェインバウム前メキシコ市長が勝利。改憲によって財政赤字が拡大するとの思惑から上昇を続けてきたメキシコペソが暴落した。上昇が続いたことや、改憲の動き継続などメキシコペソを取り巻くリスクは盛沢山。一方で、景気拡大や高金利を期待したメキシコペソ買いの動きも底堅い。メキシコの政治リスクなどをもとにメキシコペソの今後の見通しを示すとともに、メキシコペソ下落の時になすべき投資行動を提言する。

オーストラリア準備銀行(RBA)は5月、政策金利(オフィシャルキャッシュレート)を4.35%で据え置いた。オーストラリアのインフレは高止まりする一方で景気は鈍化しているため、今後のオーストラリアの金融政策に関する市場見通しは、利上げ、利下げ、据え置きが入り混じっている。市場の見方が不安定なときは投資チャンスの高まりでもある。オーストラリアのインフレ、景気、金融政策の今後の見通しを提示するとともに、今後の豪ドルの動きを大胆に予想する。

ドル円が約34年ぶりの156円台を記録するなど円安の進展が目立つ。ただ米国は年内の利下げ見通しが強まっており、今後はドル以外の高金利通貨への注目が集まりそうだ。為替相場を長年ウォッチしてきたアナリストが、高金利通貨の代表例であるトルコリラ、ブラジルレアル、メキシコペソの注目ポイントを整理するとともに今後の見通しを大胆に提示する。
