「ウチの場合、夏休みの時期以外は忙しいので、病気や家庭の事情などの理由以外で有休を取る人はほとんどいません。法律で義務になっている年5日の取得は最低クリアしたいので、これまで通り夏休みだけ有休で取るように就業規則を変更するのは可能ですか?」
○就業規則の不利益変更とは、賃金の引き下げや手当のカット、福利厚生の廃止など、従業員にとって不利益な方向に、就業規則を変更することをいう。
○使用者(企業など)は従業員の不利益となるような労働条件の一方的な変更は、原則禁止とされている。(労働契約法9条)
○例えば有休の5日取得を容易にするため、就業規則にあった所定休日もしくは特別休暇を廃止して、有休で対応させるよう変更した場合、労働者にとっては休日数や特別休暇の取得可能日数、自己の申請で有休を取得できる日数が減るので、原則不利益変更に該当する。
○就業規則等を不利益変更するには労使の合意があれば可能だが、変更の必要性や相当性、不利益の程度などが合理的であることが必要で、そうでない場合、従業員に説明しても納得してもらえず、労使の合意が得られないことがある。
企業が従業員に有休を与える日を指定するには?
「現状、有休を取らない社員が多くても、中には有休をきちんと消化したい社員もいるでしょう。皆さんに変更理由を説明した場合、反対する人が出る可能性もありますし、変更の理由も『単に有休の取得率を上げるため』では合理的とは言えないでしょう」
「では、就業規則を変更せずに、このまま運用を続けているのはダメですか?」
「会社が一方的に休日を有休に充てることは、法律違反(労働基準法39条)になります」
「じゃあ、どうすればいいですか?」
「一つの提案ですが、皆さんには5日間ある夏休みのうち、休日で3日、有休の計画的付与で2日取ってもらい、夏休みに限らず年末年始やGWなど、計画的付与日を設けることで年5日の有休付与が可能になるでしょう。新入社員で有休の付与ができない場合には有給の特別休暇を付与するなどの対処をします」
○有休の計画的付与とは、使用者(企業など)が有休を与える日を指定する制度で、運用する場合、就業規則への明記と労使協定の締結が必要である。
○計画的付与制度の対象になるのは、有休のうち5日を超える部分である。例えば有休の付与日数が年20日の労働者の場合、15日まで計画的に付与することができる。
○計画的付与をした場合、使用者が一方的に付与日を変更することは不可で、労働者も付与日に有休を取得することになる。
○計画的付与の内容を変更する場合には、労使協定の変更が必要である。