総合商社と平均年収、就職難易度で鎬を削るのが財閥系不動産だ。賃金体系は基本的に年功序列で働き方も「ホワイト」ながら、総合職では40代で年収2000万円台が視野に入るという。ヒューリックも少数精鋭で圧倒的な1人当たり売上高を実現して年収ランキングでは、財閥系2社を上回る3位にランクインする。一方で大手不動産の株式市場からの評価は必ずしも高くない。特集『高年収&高収益 勝ち組企業大解剖!儲けの秘密と本当の待遇』(全18回)の#15では、各社のビジネスモデルと株式市場の懸念を解説する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
財閥系2強以外にも
不動産は高年収企業が多い
「高給でホワイト」――。
難関大学の就職人気調査で上位に君臨する財閥系不動産。特に三井不動産と三菱地所は別格の存在である。
人気の秘密はスケールの大きい仕事内容に加えて、年収の水準が魅力的なことだろう。東京商工リサーチが作成した上場企業約3200社(持ち株会社を除く)の2021年度の平均年収ランキングでは、三井不動産が1274万円(5期前比13万円増)で15位、三菱地所が1265万円(5期前比で7万円増)で16位に登場する。
上記の数字も実態を表していないという声もある。なぜならば三井不動産、三菱地所には「総合職」以外に、主に進行サポートやバックオフィスを担当する「業務職」があり、それぞれで年収の水準が異なる。総合職に限定すれば平均年収はもっと高く、40代で2000万円台が見えてくる。
年収以外の待遇面においても魅力的な要素が多い。例えば、メガバンクや生損保は地方転勤が多いが、三井不動産の場合は、東京の超一等地に建つ本社ビルを中心に約9割が首都圏勤務だ。海外転勤も先進国が中心である。他の高年収業種と比較すると残業時間も多くなく、福利厚生も充実している。
つまり「高給」でありながら「ホワイト」な企業といっていい。若い世代や子育て世代に人気の要素を満たしているのだ。
2社に限らず、不動産セクターには年収の高い企業が多い。直近の東京証券取引所(東証)上場企業の平均年収は620万円だが、不動産セクター約150社の平均年収は668万円と平均を50万円近く上回る。
財閥系2強を平均年収で上回る企業も存在する。上場企業約3800社の平均年収ランキングでは、ヒューリックが1803万円(3位)、地主が1694万円(4位)、霞ヶ関キャピタルが1312万円(12位)に登場する。
なぜ不動産セクターは高年収なのか。そして、今後もその地位は安泰なのか。
実はピカピカに見える財閥系2強も足元では悩みを抱えていることが分かった。ひそかにモデルチェンジを進めているのだ。次ページでは不動産セクターのビジネスモデルと年収の詳細を開陳する。