久しぶりに帰省したら実家が物であふれている。親が年を取ったなと感じた。そんな人も多いのではないでしょうか。男女ともに健康寿命は70歳前後といわれています。70代を迎えると、元気そうに見えても体力が低下し始め、片づけようという意思はあっても、片づけられないということもあるのです。ですが、気を利かせて家のなかを片づけたつもりが、思わぬトラブルに発展することがあります。片づけ講師の渡辺亜矢さんの著書『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』(青春出版社)から、親子でスムーズに片づけを進められる方法をご紹介します。
親とモメない片づけをおこなうには「物」を主役に
「親の住む実家には物が多くて心配。つまずいて転んで入院なんてことになったら……」
「自分には別に住む家があるので、親がいなくなったら実家をたたむことになる。いずれこの家にある物を片づけないといけないから、今から何とかしないと」
このように考えた娘や息子が、実家に帰省した折、あるいは衣替えのタイミングなどで実家を片づけたところ、親は大激怒! 履くあてのない穴のあいた靴下の片方や、古くてゴワゴワになったタオルなど、どう見ても不用だろうと思う物を親切心で捨てただけなのに……よくある実家の片づけトラブルの事例です。
物に足が生えて勝手にやって来たわけではありません。親が買ったりもらったりしてそこに持ち込んだから、存在しているのです。つまり、物がそこにあることと、親が取っておいていることには、何らかの理由があるということです。
人は物なしに生きられませんし、誰でも物に対して所有欲(物欲)があります。親にとってはどんな些細(ささい)な物でも、人生の一部のようなもの。それなのに、他人、ましてや子から「汚いから捨てよう」「古いから捨てよう」といわれたら、自分が汚い・古いと扱われたかのように感じてしまいます。その結果、片づけ自体に拒否反応を示してしまうのです。
しかし、親の健康や安全、そしていずれはやってくる相続のことなどを考えたら、実家の片づけは急務です。では、どうすればいいでしょうか。