カギは、親とのコミュニケーションを見直すこと、具体的には「話し方」を変えることにあります。例えば「転んでケガをして、介護になったら大変だから」というよりも、「地震が来てタンスの上の物が落ちてきたら危ないから」といわれたほうが、プライドが傷つかず、親もやる気になってくれます。ポイントは、「人」ではなく「物」を主役にして会話すること。つまり、「物コミュニケーション」が効果的なのです。

「話す」ことで、物から気持ちを「離す」

 物を増やすことは簡単です。しかし、手放すことは心理的、感情的なエネルギーを必要とします。

 親も私たち子世代も、「物を捨てることは悪いことだ」と小さい頃から知らず知らずのうちに刷り込まれてしまっています。そのため、理屈=頭では捨てていいと思っていても、なかなか体=感情のほうがいうことを聞きません。

 そこで有効なのが、片づけの場面で物にまつわるストーリーを語り、それを親子で共有することです。その物に込められた感情や思い出を外に出すことで、物自体から感情を切り離すことができるのです。

「話す」ことは、物を手放すことに対する罪悪感や悲しみを軽減し、物や自分自身を客観的に見ることを助けてくれます。物への執着を取り去る手段として、話すことによる効果を利用するのです。

 例えば、親が子がまだ小さい頃に着ていた産着(うぶぎ) をとっていた場合、「小さいときに着ていたね」→「よだれを垂らしたところが変色しているね」→「今は(子は)大きくなって、孫を連れて来る年になった」→「孫が着るかもしれないと思っていたけど、実際には着られないね」といった会話をすることで、「もう手放してもいいか」という気持ちへと変化していきます。

 このように物について語り合うことは、使わない物でも捨てることに罪悪感を持っている親世代(子世代も)にとって、物に対して客観的かつ肯定的に捉えられるようになるメリットがあります。

 また、「自分は1人ではない」という安心感ももたらします。家族と思い出を共有し、社会的なつながりを感じることにより、親の心のなかに「次の世代に迷惑をかけずに生きていきたい」という思いが芽生えることもあるでしょう。