“私”の見解こそ正しい
自信を深める現代人

 だがこれは問題の半分にすぎない──もう半分は、水面下で情報の「いいとこ取り」が行われていることに、私たちが気づかないでいる点だ。情報は人知れずふるいにかけられているため、私たちの目の前に提示されるのは、もともと自分がもっていた意見に即したものが多くなる。

 つまりこういうことだ。グーグルなどの検索エンジンに調べたいキーワードを入力すると、あなたの過去の検索やウェブ履歴に基づいて、カスタマイズされた検索結果が表示される。言い換えれば、あなたが民主党支持者で、大統領候補者討論会の最新情報について調べようとすると、民主党支持者が、民主党候補者の優勢を信じて書いた最新記事やブログが多く提示される。

 そのリンク先には、あなたが以前訪ねたニュースサイトやご意見ブログ、またそれらに関連したサイトが含まれる。最初に表示された20件が民主党候補者のパフォーマンスを褒め讃えたものだとしたら、そのパフォーマンスは本当に素晴らしかったのだという印象が誰の心にも残るだろう。

 そのうえ、応援する候補者の優位性を示すさらなる証拠は、ツイッターやフェイスブックのフィードにも満載されているから、次の選挙結果に対するあなたの自信は一段と膨らんでいく。

 ただここで注目したいのは、あなたが共和党支持者だった場合、フィードに表示される内容がガラリと変わってくる点だ。というのも、あなたのツイッターやフェイスブックのアカウントは、別の共和党支持者のアカウントと多くつながっていると考えられるからだ。

 グーグルの検索結果もまったく違うものになるかもしれない。これは、グーグルが洗練されたアルゴリズムによって、あなたの興味や関心をそそる事柄を見通すからだけではない。検索の考慮には、位置情報も入ってくる。グーグルは、あなたが探しているまさにその情報を提供したいと考えている。あなたが欲しているのは、海の向こう側のウガンダに住むピント氏よりも、近所に暮らすリアナが興味をもつ情報に近いかもしれない。これは妥当な推測である。

 こうしてあなたは、地元のユーザーが頻繁に閲覧するウェブサイトへのリンクへ行き着く。共和党支持者が多く住む州と、民主党支持者が多く住む州は決まっている傾向にあるから、あなたが少数派でない限り、「大統領候補者討論会」を検索すると、お気に入りの候補者を応援するサイトへのリンクが表示される。こうした操作は知らないうちに行われているので、私たちは自分の政治的見解、はたまた文化的嗜好や科学への信念について、ますます自信を深めるのである。