世界は“自分と同じ意見”で
溢れている

 このプロセスは人を弱くする。自分とは異なる意見の潮流を知らずして、どうしたら合理的に真実を見分けることができるだろう。

 テクノロジーによって生じるこの確証バイアスを最小限に食い止めるには、次のような行動が有効になる。

 インターネット検索が自分の考えに合わせてカスタマイズされるのをできる限り抑えたければ、匿名ブラウジングを行うか、ブラウザに残った個人情報(位置情報など)を削除し、履歴を無効にすることだ。

 また、登録しているソーシャルメディアのアカウントを更新して、常連以外(一定の敬意はもっているが、自分とは違う見解を支持している人)ともつながるようにする手もある。たぶんその人たちも、フォローを返してくれるだろう。

 私たちの意見を知らないうちに強化してしまう人為的な方法は他にもある。ソーシャル・フィードバック・ループと呼ばれるものだ。

 たとえば、あなたが素晴らしい新商品を見つけたとして、その胸躍る発見を友人全員に伝え、有用な情報をシェアしようとする。それは「スーパールーター」という名前の無線ルーターで、広範囲で超高速通信を行うことができる。あなたは友人や身内にその話をし、ピンタレストやインスタグラムなどSNSに投稿する。

SNSにハマればハマるほど「自分は正しくて優秀」と思い込む理由、過信を抜け出す「スマホの設定」とは?事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』(白揚社) ターリ・シャーロット 著、上原直子訳

 するとそれから2カ月ほどのあいだ、不思議なことが起こる。オンライン上であれ直接であれ、スーパールーターの話を知人からよく聞くようになるのだ。「最近出た超強力ルーターを知ってる?」、「これがあればネット生活が変わるらしいよ」。しかもそう言うのは親しい人ばかりではない──いまや誰もがスーパールーターを知っているようなのだ。

 ただしあなたは、この話題が広まるきっかけに自分自身が関わったとはあまり思っていない。大勢の人にアイデアやおすすめのもの、あるいは意見を伝えると、それを聞いた誰かが別の人に伝え、それがまた別の誰かに伝わる。

 SNSのつながりは複雑に絡み合っているから、巡り巡ってその意見が自分のもとに戻ってきても、自分が情報源だとは気がつかないだろう。それどころか、他の多くの人たちもまったく同じ意見をもっていると結論づけ、自分の見解をより強く信じるようになるかもしれない。