背を向けた男女写真はイメージです Photo:PIXTA

悲しいかな、人間とは「安心」と「欲望」が反比例する生き物である。つまりどんな人と結婚したとしても、パートナーのことを信頼や安心できる存在だと思えば思うほど、性的に魅力的な相手として見ることができなくなってしまうというのだ。本稿は、アンジェラ・アオラ著、安達七佳訳『不倫の心理学』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

パートナーシップの情熱は
不確実性の量が多い方が続く

 人間は安心を求める。それは明らかだ。安心は生命が生き残るための一種の必要条件だ。しかし人は快楽や興奮も求めている。肝心な点は、この2つの欲求が拮抗していることだ。

 以前他の著書で、相手に強い欲求を感じるには予測可能なこと以外の何かが必要だと書いたことがある。これはベルギーのカップル・カウンセラーで作家のエステル・ペレルも著書『セックスレスは罪ですか?』で述べている。欲望にはある程度の不確実性が必要なのだ。

「相手を長く愛したければ見慣れた関係に未知の要素を取り入れる必要がある。普段とは違う角度から、つまり少しでも未知で見慣れない存在として相手を見ることができれば可能になるのだ」と。

 謎や未知の部分が欲望を呼び起こすのかもしれない。スウェーデンの有名なテレビドラマで、長年連れ添った3人の子を持つ夫婦が、ドレスアップしてホテルのバーで落ち合うというシーンは興味深い。

 数時間後にバーカウンターで落ち合うと、妻が「ここにはよく来るの?」と尋ねる。

 答えた夫は、一杯ご馳走しても構わないか訊き、ホテルの一室で情熱的な結末を迎える。

 やや陳腐な展開だが、エステル・ペレルをはじめとする多くの人間関係の専門家のテーゼが確実に要約されている。この夫婦がそうだったように、相手のすべてまでは知らなかったり、お互いのことを本当の意味で知らないとわかった時に緊張感は増すのだ。未知なるものが欲望に新たなきらめきを与える。

 自己啓発セミナーで世界中に知られたアンソニー・ロビンズも「パートナーシップにおける情熱の量は、あなたが持ちこたえられる不確実性の量に正比例する」と簡潔に表現している。

安心感があるパートナーは
欲望を刺激しないという現実

 人間は安全を求め、人生をコントロールしようとする。もちろんそう簡単なことではない。それまでやってきたことがうまくいったと思えることで生き延びられる。以前食べたものをあえてまた食べたから今回も生き延びられた、というように。