東京メトロ内の“序列”が激変!
東西線はなぜ混雑が緩和された?

 第3位は、東西線(木場駅→門前仲町駅)だった。コロナ禍前の19年度は199%だったのが、23年度には148%と大幅に改善された。

 東西線の同区間の混雑が緩和された最大の原因は、乗客の減少にある。19年度にはピーク時1時間当たり7.6万人を輸送していたが、20年度には4.7万人に激減。23年度は5.9万人まで戻っているものの、まだ以前の水準には及ばない。

 そして、乗客が戻ったとしても、以前のように東西線が激しく混雑することはないかもしれない。南砂町駅の2面3線化が完成するなど、コロナ禍前から進んでいた遅延・混雑解消の対策が、着々と形になりつつあるからだ。

 さらに、有楽町線支線の延伸(豊洲駅~東西線・東陽町駅~半蔵門線・住吉駅)が実現すれば、東西線の乗客は南北方向にも分散される。いずれ、東西線が混雑率の絶対王者であったことさえ、昔話になってしまうかもしれない。

コロナ禍前より混雑している路線はある?
「輸送人員伸び率」では南北線に注目

 ところで、首都圏で「乗客数がコロナ禍前を上回った」路線はあるのだろうか?ピーク時1時間当たりの乗客数を19年度と23年度で比べた「輸送人員伸び率」も算出してみた。

 すると、東京メトロでは南北線が輸送人員伸び率104%と、興味深いことが分かった。南北線と直通運転を行う埼玉高速鉄道も健闘(同94%)している。埼玉高速鉄道は各駅の利用者ベースで確認しても直近2年間で1~2割ほど伸びている。これは、長らく進まなかった沿線開発が、ようやく進み始めた結果と推測できる。ただし、南北線は車両の8両編成化によってピーク時の輸送力・定員が2割ほど増え、その関係で混雑率の上昇は比較的抑えられている可能性がある。

 平成元年まで振り返ると、首都圏の鉄道の平均混雑率は202%もあり、路線によっては身動きもできないほどだった。その後、国交省が「通勤ラッシュ混雑率を180%以下へ」と掲げて対策を打った結果、平成後期は165%前後で推移してきた。

 しかし、令和に入ってコロナ禍とリモートワークが浸透し、乗客は一時、激減した。そして、コロナ禍がほぼ完全に明けた23年度、首都圏の平均混雑率は前年の123%から136%へ上昇し、朝の通勤通学ラッシュが戻り始めている。

 他方、東京メトロ東西線と同様に、痛勤ラッシュの象徴でもあった、東急田園都市線や東急東横線は、コロナ禍前と比較してピーク時の利用が6~7割程度にとどまっている。コロナ禍をきっかけに、首都圏の通勤事情は確実に様変わりしたと言えるだろう。

 東京メトロが株式上場によって得る売却益のうち、どれだけ混雑緩和の対策(基礎投資)に費やされるかは分からない。が、先に述べた有楽町線だけでなく南北線の延伸などの「成長投資」に使われるかもしれない。働く人が健やかに職場に移動するためにも、少しでも通勤ラッシュの緩和に使ってほしいものだ。