つながらない「話せる券売機」
利用者の不便を解消すべく、同社はオペレーターと会話ができる、受話器付きの「話せる指定席券売機」も設置している。「こちらのほうが若干便利」だと、小林さんは言う。
だが残念ながら、「話せる指定席券売機」の設置駅はかなり少ない。JR山手線の駅の場合、設置されているのは高田馬場駅と巣鴨駅のみだ。
「しかも待ち人数が多く、オペレーターにつながるまでかなり時間がかかるケースもあると聞いています」(小林さん、以下同)
娘のきっぷ購入の際に、えきねっとも試してみた。こちらもある程度のきっぷの知識が必要だが、気になったのは、ちょっと不思議な選択肢が一番上に表示されたことだ。新大阪駅から大阪駅までのわずか4分ほどの移動に、特急料金のかかる「特急サンダーバード」を使うものだ。
「みどりの窓口できっぷを購入すれば、東京駅から新大阪駅までの新幹線特急券と、東京都区内から大阪市内までの乗車券が発券されます。おそらく、えきねっとはデータベースから自動的にルートを表示するので、そんなおかしな選択肢も表示されてしまうのでしょう」
つまり、えきねっとは、それを「おかしい」と判断できる人が使うことが前提のシステムなのだという。
「指定席券売機やえきねっとを使いこなせない人は、世の中に大勢います。お盆やお正月のシーズンになると、そんな人たちがみどりの窓口に長い行列をつくるわけです」
なぜ券売機は使いづらいのか
指定席券売機やえきねっとが登場してから約20年になるが、使い勝手はあまり改善されているように見えない。
「数年前まで、みどりの窓口がそれなりにあったので、苦情がそれほど多くなかったこともありますが、そもそもこのシステムを大きく変えるのは難しい」と、小林さんは言う。
大もとのJRグループのシステム「マルス(MARS)」を変えることが困難だからだ。駅員がきっぷの予約や発券をするためのシステムで、指定席券売機もえきねっともマルスをベースにしたものだ。さまざまな運賃計算の特例や規定がある「きっぷ」と利用者の希望に折り合いをつけたいところだが、システムの根本にかかわるため、そう簡単には手を入れられないという。