JR東日本と東武を含む関東私鉄7社は5月29日、磁気式の「普通乗車券(近距離券)」を2026年度末以降、QRコードを使用した乗車券に置き換えると発表した。2020年以降、各地で実証実験が行われてきたQRコード乗車券が、いよいよ本格的な普及に向けて加速しはじめた。各社が磁気乗車券の廃止に乗り出す背景と、普及への課題とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
QRコード乗車券の普及に向けて
関東鉄道事業者が巻き返しへ
2020年以降、各地で実証実験が行われてきたQRコード乗車券が、いよいよ本格的な普及に向けて加速しはじめた。QRコード乗車券自体は2014年に沖縄都市モノレール(ゆいレール)、2015年に北九州高速鉄道(北九州モノレール)が導入済みだが、どちらも独立した短距離路線であり、大都市部の大手鉄道事業者への拡大には至らなかった。
しかし、2020年3月に阪神電鉄が大手私鉄では初となる実証実験を実施して良い結果を収めると、2022年3月には近畿日本鉄道がQRコード乗車券「デジタルきっぷサービス」を開始。関西大手私鉄が先行する形となった。
昨年12月14日には、関西の鉄道事業者で構成される「スルッとKANSAI協議会」が、スマホを利用したデジタル乗車券「スルッとQRtto(スルッとクルット)」を、大阪メトロ、近畿日本鉄道、京阪電鉄、南海電鉄、阪急電鉄、阪神電鉄、大阪シティバスの7社に導入すると発表。6月17日から「スルッとKANSAI 大阪周遊パス」などのフリーパスを発売する。
出遅れた格好の関東鉄道事業者だが、一気に巻き返しを図りつつある。東急電鉄は2023年8月から、デジタルチケットサービス「Q SKIP」を利用したスマホ向けQRコード乗車券サービスを開始し、「東急ワンデーパス」などのフリーきっぷを取り扱っている。今年度中に全駅で対応予定というから、実証実験の位置付けながら、事実上の正式導入と言えそうだ。
いずれもQRコードと親和性の高いモバイル端末で購入し、沿線施設と連携しやすいフリーきっぷとしての導入だが、事業者はそれにとどまるつもりはない。ICカードやクレジットカードタッチ乗車を除く乗車券の全てをQRコード化することで、コストのかかる磁気乗車券を廃止することが、最終的な目標だ。