オンライン授業は「スカーフ+短パン」で

 コロナの影響で、イランでは日本よりも早く、小学校から大学まで一斉休校となり、授業のオンライン化が決まった。政府の肝いりでオンライン授業用のアプリまで開発され、私もこのときばかりは「イラン政府、なかなかやるじゃないか」と感心したものである。

 そんななか、女子たちの間で、ひとつの問題が浮上していた。ベールをどうするかである。生徒側がカメラをオフにしてもよい場合は、もちろんベールを着用する必要はなかった。

 ただ、実際には授業の質の低下を恐れた教師や学校の判断によって、顔出しでの出席が求められるケースも多かった。その場合には、実際の教室にいるのと同じことなので、本人が自宅にいても、ベールを着用しなければならないことになった。

「家のなかでもベールなんて、最悪~!」

 女の子たちは、どこまでもつきまとうベールの呪縛に、うんざりしていた。

 それでもまだ冬のうちはよかった。やがて春が過ぎ、夏になると、もうベールなんか暑くてたまらない。そこで彼女たちの編み出した奇策が、「部屋着のままスカーフだけかぶる」というものであった。どのみちカメラに映るのは顔まわりだけ。映らない部分は適当でいいや、というわけである。

「部屋着+スカーフ」という珍妙なスタイルに初めてお目にかかったのは、ある友人宅に滞在していたときだった。彼の妹は女子高生だったが、「そろそろ授業だから」と立ち上がると、よれよれの短パンにTシャツというラフな出で立ちの上から、面倒くさそうに1枚のスカーフをかぶり、自室へ引っ込んでいったのだ。

 短パンにスカーフとは、まさに「頭隠して尻隠さず!」と、思わず吹き出してしまったが、すぐに「まあそうだよなあ」と納得した。当時、リモートワークの日本人のなかにも、上半身はスーツにネクタイ、下半身は下着1枚なんて人がいたようだが、イラン女子の発想もそれとほとんど変わらないのだった。

 その後、同じような格好でオンライン授業に臨む女の子たちの写真を、インスタグラムでも見かけるようになった。あまりに滑稽なので、家族の誰かがこっそり写真に撮って投稿していたのだろう。