塾や語学学校、家庭教師のオンライン授業で、ベールはどうしていた?

 オンライン授業とベールについて、もうひとつ興味深い話がある。

 学校や大学の場合、例外なくカメラの前ではベールを着用しなければならなかったが、一方で学習塾や語学学校、家庭教師のような民間のオンライン授業は、そこまでベールにうるさくなかった。となれば、大部分の女子生徒がベールなしで参加するかと思いきや、意外なことにそうでもなかったのである。

 理由はいくつかある。一つは、クラス内に「敬虔な」生徒がいた場合、ベールを着用していない女子は政府機関に密告される可能性があったからだ。もしそうなると、不着用だった本人だけでなく、塾や学校側もペナルティを科されてしまう。

 当然、そのような事態を想定して萎縮した塾側が、はじめからベール着用を求めてくるケースもあったようだ。

 また、稀に「敬虔な」講師本人(多くは男性)が自らの意思で、画面の向こう側からベールを強制してくる場合もあったが、そういう講師はペルシア語の隠語で「ハルマザッブ」(あえて訳せば、「妄信バカ」)と呼ばれて煙たがられ、ほとんどの女子生徒から授業をボイコットされていた。

 要するに、民間のオンライン授業では、塾、講師、クラスメイトの三者すべてがベールに寛容な姿勢を共有できない限り、女の子たちは安心してこれをはずせないという状況が続いていたわけだ。

 コロナが落ち着いた今、オンライン授業はほとんど行われていない。そして、反体制デモ以降は、対面授業であっても、もはやベールのためにあちこちの顔色をうかがう必要はなくなった。これまで仕方なく1枚のスカーフをかぶっていたような女子生徒たちが、それすらもかぶらない権利を堂々と主張しはじめたからである。