DXでマネジメントが楽になり
石油メジャーが小売業に再参入

 前編では、米国と日本のコンビニの構造の違いを述べた。そもそも米国でコンビニ×ガソリンスタンドが普及したのは、なぜだろうか? それは、米エクソン・モービルやシェブロン、英シェルやBPといった石油メジャーが、セブンイレブンなどのコンビニがガソリンを品ぞろえの一つとして追加したのに対抗して、ガソリンスタンドにキオスクのような小規模な店舗を併設したことから始まった。

 しかし、この勝負はあっけなく決まった。コンビニのほうが、圧倒的な品ぞろえで集客したからだ。さらに、ガソリンという比較的単純な、販売や在庫管理にテクニックを必要としない製品しか扱ってこなかった石油メジャーは、結果的に小売店舗をマネジメントできず、撤退に追い込まれた。

 ところが近年、DXが進展したことで過去の状況を一変させている。DXによりマネジメントの術をゲットした石油メジャーが、小売り業への回帰を始めているのだ。

 他社が撤退する中、しぶとくガソリンと小売りを一体運営してきたのがマラソン石油だ。同社は併設店舗のスピードウェイを持つことで、ガソリン価格に左右されない安定した収益を維持する成功モデルを築いた。しかし最後は、投資家の圧力によってスピードウェイを切り離し、セブン&アイに売却を余儀なくされた。結果的にこのディールが、石油メジャーの再参入を招き、20年以降のM&Aの一つの核となった。

 メジャーの再参入は、昔のようにただ、ガソリンスタンドにつまらないキオスクを併設するのではない。例えば、シェブロンのエクストラマイル(ExtraMile)は、ユニークなアニメキャラクター(ExtraMan)をつくってブランド力を強化した。また、BPはサービスや品ぞろえで定評のあるソートンズ(Thorntons)を買収して再参入している。時代に合わせて、「コンビニが品ぞろえの一つとしてガソリンを販売している」に変えてきている。

 DXによってセールスプロモーションが展開できることで、地域を超えたチェーンのメリットが出てきたことも挙げられる。割引クーポンは紙からスマホのアプリに替わり、効果的かつ統一的に販促を展開することが可能になった。それぞれの地域で特色を持った中小コンビニに対して、大手は大手ならではのやり方で力を発揮するようになっている。

セブン&アイとカナダ企業の「合併」は意外と都合が良い?米コンビニM&Aが活発な3大要因シェブロンのエクストラマイル(ExtraMile)はアニメキャラクター(ExtraMan)でブランド力を強化した
セブン&アイとカナダ企業の「合併」は意外と都合が良い?米コンビニM&Aが活発な3大要因シェルの新しいフォーマット、イギリスにて。EVの充電ステーションとコンビニを備える(筆者提供写真)
セブン&アイとカナダ企業の「合併」は意外と都合が良い?米コンビニM&Aが活発な3大要因シェルのコンビニ店舗内の品ぞろえは充実している(筆者提供写真)