クシュタールのセブン買収目的は
北米でのイニシアチブの確立

 クシュタールがセブンに買収意向を示す最大の狙いは、北米市場において、次世代型コンビニで業界のイニシアチブ(主導権)を確立することにあるはずだ。DXによって地殻変動が起こりつつある中、これはクシュタールにとって、スピードウェイの買収合戦での負けを取り戻す絶好のチャンスなのだ。

 一方で、同時に北米市場ではピンチも迫っている。すなわち、再参入し始めた石油メジャー、QSRを武器に下剋上を狙うHVR(High Volume Retailer)、先頭をひた走るセブン、そして彼らとの先の見えないM&A合戦である。

 EV化に焦る石油メジャーは、迫り来る新時代への移行期のモビリティ拠点として、ガソリンと充電を満タンにできるハイブリッド拠点網を確立したいと考えている。そこに、コンビニ網はうってつけだ。豊富な資金を持つ石油メジャーが、本格的に再参入すれば、相当の脅威となる。そうなる前に、クシュタールが北米での地位を確立しておく必要があると考えるのは、自然なことだろう。

 しかも、QuikTripやWawaなどが、魅力的なフード開発と新フォーマットの店舗で集客力を高めている。これに対抗するためには、日本で独自の進化を遂げたセブンの商品開発力は、頼りになる(ただし、前編でも述べた通り、ただの水平展開ではNGだ)。

 一方で、セブンとのM&A競争が、“目の上のたんこぶ”でもある。米コンビニ3位のケーシーズ・ゼネラルストアのディールでも、クシュタールは経営権の委任状争奪戦で敗れたが、その敗れた直後に、セブンが即座に名乗りを上げたこともあった。結果的に両社とも成功しなかったが、今後も似たような事例が起きるだろう。