共通ポイント20年戦争Photo:JIJI

三井住友フィナンシャルグループ(FG)は2024年4月22日、Tポイントを統合したVポイントの展開を始めた。三井住友FGがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と組んで、楽天グループやNTTドコモなど強豪がひしめくポイント経済圏の覇権争いに名乗りを上げたのだ。だが、新生Vポイントには早くも死角が生じている。長期連載『共通ポイント20年戦争』の#38では、ゲームチェンジャーを目指すVポイントの拡大シナリオに潜む2つの誤算について解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

三井住友FGがVポイントで参戦
楽天経済圏に埋没する危機感にじむ

「独自の経済圏を確固たるものにする」。2023年11月25日に65歳で急逝した三井住友フィナンシャルグループ(FG)前社長の太田純は、22年末のダイヤモンド編集部のインタビューの中で、Vポイント強化の狙いをそう語っている。

 インタビューに先立つ同年10月、三井住友FGはTポイントを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との資本・業務提携を発表。自社のVポイントにTポイントを統合させ、新生Vポイントを展開する方針を明らかにしていた。ポイント経済圏の覇権争いにメガバンクグループが参戦したのだ。

 Vポイントの会員数は8600万人程度と国内有数の規模となる。Tポイントが持っていた15万の加盟店に加え、Visaカードが持つ世界1億店以上の加盟店で利用できることが強みだ。三井住友FGはスマホ向けの金融アプリ「Olive(オリーブ)」で個人向けの決済や金融サービスのデジタル化を進めている。それらを結び付けるものが、Vポイントなのだ。

「現状のまま何も変えずに放っておくと凌駕される」。大胆な手を打った太田はインタビューでそう認めていた。楽天グループやNTTドコモなどの巨大なポイント経済圏に埋没することへの危機感をにじませたものといえる。Tポイントとの交渉を先行していたドコモに割り込む形で、資本・業務提携に踏み切ったのも、経済圏の柱となるポイントが欠かせないという強い意思表示だったのである(『窮地のTポイントがドコモと提携「ほぼ合意」も、寸前で三井住友FGにくら替えした真因』参照)。

 そして、24年4月22日、新生Vポイントの展開がスタートした。だが、強い決意とは裏腹にVポイントの拡大シナリオには早くも2つの誤算が生じている。