「輝け」の歌詞にある「上手くいかない事ばっかで溜め息まじり君の声」っていうところ、心の中をちょっと覗けば、いまだに13、14歳ぐらいの悲しい顔をした自分がいるのがわかる。あの原体験は、まだまだ俺の中に強く残っているんだね。

 ファンの人から悩み相談をされることもよくあった。コロナ禍以降はできていないけど、握手会で対面すると、泣きながら自分の悩みとかを相談してくれる人もいた。暗い顔をしていた13、14歳の自分に向けて書いた言葉が、今悩んだり苦しんだりしている人たちに届いているのならうれしい。

 ただね……、たまに憧れたりもしたこともあったんだよね。かっこよく聞こえそうな英語使ったり、よくわかってないけど、すごく難しい比喩表現を使って、「いったい、これは何を伝えたい歌なんだ?」ってみんなに考えさせる歌詞だとか。ちょっとカリスマ性のある、妖艶なアーティストのことをすごくいいな、かっこいいなとか(笑)。

書影『未完声』『未完声』(徳間書店)
ファンキー加藤 著

 妄想だけはめっちゃするんで、ソロになったばかりのときには、「俺もそんな風にできないかな?」なんて考えてみたりもした。いや、これ、マジな話(笑)。

 だけど、俺の中にはやっぱり、13、14歳ぐらいの俺自身を想像して、ラジカセで夢中になって音楽を聴いている少年を想像するところがあって、そこに一発聴いてスッと入ってくるような言葉だったり、メロディだったり、歌詞っていうほうが、俺は「あの日の自分」を救えるなっていうのがある。いまだに「中学生の自分」が心の中にいて、曲を作る上で過去の自分を想像するし、参考にしている。