「分かった。あなたがやりたいなら、やればいいんじゃない」

 委員長になると、法人登記簿に自宅の住所が載ることになり、新聞やテレビの記者が取材に来ることもあるようだ。場合によっては家族には迷惑をかけることになるが、これも自分に与えられた役割かもしれない。「自分で決めろ」と言っていた店長の、

「求められて仕事ができることほど幸せなことはない。そんな人物が自分の部下にいたってことを誇りに思う。頑張ってこい」

 という言葉で、気持ちが吹っ切れた。

 2016年10月そごう・西武労働組合第13期定期中央大会で、私は中央執行副委員長に選出された。

 ちょうどその直前、親会社のセブン&アイHDでも大きな動きがあった。

 83歳になっていたカリスマ・鈴木敏文氏が、実績に乏しい次男を要職に据えたことなどから社内の反発を招き、イトーヨーカ堂を創業した伊藤家と対立した。鈴木氏はセブン-イレブン・ジャパン社長の井阪隆一氏を解任しようとしたが、取締役会の承認を得られず、逆に自分が退任に追い込まれた。

 会社法の権威として知られる伊藤邦雄・一橋大学大学院特任教授、米村敏朗・元警視総監ら社外取締役が伊藤家側につき、井阪氏を支持したことで、社内の勢力図が一変した。

 そして、この井阪氏が主導する改革が、そごう・西武にも大きな渦を巻き起こすことになる。