前回組合執行委員を外れたときは、もう2度とやることはないと心に決めていた。前年声をかけられたときはまったく受ける気はなかったが、2年も続けて声をかけてくるのはよほどの理由もあるのだろう、と少しずつ気持ちは変化してきていた。

 会社の先行きに対する不安もあった。

 親会社がセブン&アイに変わっても相変わらず閉店が続いていた。リミテッドエディションのような、今後も百貨店として生き残っていくために有効な「武器」になりうるものが、大量在庫によって陳腐化してしまう一連のプロセスを現場で見てきて、本部の経営戦略に対する違和感を持っていた。

 私だけでなく、池袋本店のような営業力がある店舗に勤める社員の多くが同じように感じていたと思う。

あなたがやりたいなら
やればいいんじゃない

 東京で勤務するようになって10年以上が経っていたが、この間に私生活では2014年に娘が生まれていた。共働きだから、朝は娘をママチャリで保育園に預け、そのまま出社する毎日が始まっていた。

 入社20年を超え、40代中盤になっていた。このタイミング、この年齢で組合に復帰するということは、数年後に中央執行委員長になる覚悟が前提になる。

 当時の池袋本店の店長には、事前に打診を受けていることを伝え、「自分で決めろ」という、ごく当たり前で真っ当な返事をもらっていた。

 いつも自分なりに結論を決めていて、妻にはとくに相談はしていない。

「いろいろ悩んだけど組合に戻ろうと思う」