美大を目指す男子高生が主役の映画『ブルーピリオド』が公開中だ。アニメ化もされた人気漫画が原作だが、中年でも心を揺さぶられる要素が満載だったので、強く推すレビューをここに記したい。特に心が震えるのは、劇中の「名セリフ」の数々である。(フリーライター 武藤弘樹)
なぜか中年の心を掻き立てる
マンガ大賞受賞作の実写化
映画『ブルーピリオド』が8月9日に劇場公開され、好評である。この作品は2020年マンガ大賞に輝いた同名の漫画が原作で、すでにアニメ化もされているが、今回はその実写化に当たる。
原作『ブルーピリオド』は「読む人の心をアツくさせる」ことに定評があり、読者からは「主人公を応援しているだけのはずなのに自分の胸が無性に高鳴る」「走り出したくなる」といった感想が常々寄せられている。
漫画原作のアニメ化・実写化は、原作ファンの複雑な心境(期待したい気持ちと、原作の感動を損なわないでほしいという不安)の上に行われるからどのような時も鬼門だが、本作品は実写化に成功したと個人的に感じた。この場合の「成功」の定義もそれぞれだろうが、「ひとつの映画作品として面白かった」と感じることが、一鑑賞者としてできたのであった。
また、もはやアラフォーとも呼べない中年になりつつある筆者(今年で44歳)でも、己の中に青く燃える情動がまだ存在することを今作を通じて確認することができたのは、興奮を禁じ得ないポイントであり、特筆すべき映画体験である。
映画『ブルーピリオド』の見どころを、原作やアニメ版と比較しながら解説したい。なおネタバレには極力留意していく。