ゼンショーは“全勝”し続けられるのか?
さらなる成長へ「2つの鍵」

 これまで見てきたように、ゼンショーは、積極的なM&Aを通じて経済性を追求しながら、規模を拡大する戦略を取っています。同社のビジネスモデル上、この拡大路線は今後も続けていくことでしょう。

 では、この戦略を通じてさらなる成長を目指すためには、何が要所となるのでしょうか。

 一つは、「すき家」や「はま寿司」に続く、グループ全体の収益基盤を強化できる「第3の柱」を築くことにあると考えます。

超・経営思考(ゼンショー)_図5
ゼンショーホールディングスの決算書類より筆者作成 拡大画像表示

 ゼンショーのセグメントごとの売上高を見てみると、ゼロから立ち上げた「すき家」や「はま寿司」は大きな収益の柱となっています。これらの事業から得られる収益が、M&Aに必要なキャッシュを生んでいるのです。

 しかし、M&Aを通じて取得した企業は、まだこれら二つの事業に比べると、グループ全体を支えるまでの存在感はありません。グループ全体のさらなる成長を目指すなら、こうした事業の中から第3の柱となる事業を育て上げることが不可欠です。

 また、海外での展開が成功するかどうかも、今後のさらなる成長を大きく左右するポイントです。

 既に多くの海外店舗を有するゼンショーですが、今後ますます海外進出を進めていくことでしょう。その背景には、もちろん、業界全体が直面する人口減少や高齢化による国内食需要の縮小があります。しかしゼンショーの場合、こうした環境変化によるものだけではありません。

 ゼンショーは創業時から「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念を掲げています。つまり海外進出の取り組みは市場環境の変化に応じて急に始めたわけではなく、ゼンショーの存在意義そのものに関わるものなのです。

 とはいえ、国内とは異なり、海外市場では現地企業との競争や、食文化の違いなど、さまざまな課題に直面することが予想されます。こうした市場環境の中でも“全勝”という社名の由来通り、勝ち続けられるのか、今後の動向も目が離せません。