すき家Photo:Diamond

「すき家」を擁するゼンショーホールディングスの躍進が止まりません。2024年3月期には連結売上高が1兆円目前に迫り、2025年3月期にはついにその大台を突破する見込みです。日本の外食産業において圧倒的な売上高を誇る同社ですが、その成功の背景には、業態の幅広さや独自の仕組みなど、他社とは一線を画す要素が数多く存在します。その中でもゼンショーホールディングスの原動力とは一体何なのでしょうか。(グロービス経営大学院教員 太田昂志)

すき家・なか卯・はま寿司・ココス…
実は全部「ゼンショー」のブランド!

 ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)といえば、牛丼の「すき家」が真っ先に思い浮かぶことでしょう。2024年3月期決算によると、すき家は国内1957店舗、海外675店舗の合計2632店舗を展開し、売上高は2653億円に達しました。売上高2位の吉野家(売上高1264億円、24年2月期)と比較しても、その差は圧倒的です。

超・経営思考(ゼンショー)_図1
各社の決算書類より筆者作成 拡大画像表示

 しかし、同社が展開するブランドは、「すき家」だけではありません。

 和風ファストフードチェーンの「なか卯」、寿司チェーンの「はま寿司」、ファミリーレストランの「ココス」や「ビッグボーイ」など、国内だけでも19ブランドを展開しています。さらに、小売事業や介護事業を含めると、そのブランド数は40近くに上ります(2024年8月時点)。

 ゼンショーが手がけるブランドの数々を見て、「え、これもゼンショーなの?」と驚く方も多いのではないでしょうか。

 ただ、ゼンショーが、これら全てをゼロから立ち上げたわけではありません。

 もともと同社は1982年に弁当の販売事業からスタートしましたが、現在のブランドの大半はM&Aを通じてグループに加わったものなのです。最近では、2024年4月に全株式を取得したハンバーガーチェーンの「ロッテリア」がグループ傘下に入ったことは記憶に新しいことでしょう。

 そんなゼンショーは、M&Aによるスケールメリットを最大限に活用するための、独自の仕組みを持っています。