静かで滑らかな走行フィールが魅力
AWDは高い瞬発力にも驚く
優れた走りの実力にも感心した。RWDとAWDではフィーリングがだいぶ異なり、軽快なRWDに対し、AWDは瞬発力が際立つ。ハイパフォーマンスBEVに乗っていることをより実感させる。0→100kmh加速が、RWDより2.1秒も速く、わずか3.8秒でクリアする。
RWDでも速さに不満を感じることはなく、AWDの加速フィールと俊敏なハンドリングは、同セグメントに属するテスラ・モデル3やBMW・i4の高性能グレードと比べても遜色ない。
シールは動き始めがやや飛び出しぎみなところに若干の荒さを感じる。だが静かで滑らかで力強い走りの完成度は高い。ダブルピニオン式電動パワーステアリングも利いて、すっきりとした操舵感と正確でクイックな操縦性を実現している。ワインディングではまさにオンザレール感覚が味わえる。
足回りはスポーティな印象。それなりに引き締まっていて、とくに入力に応じて減衰力が変わる可変ダンピングアブソーバーを装備するAWDは、かなり硬めの乗り心地と感じた。同様の傾向はテスラ車にもある。車両重量の重いBEVでスポーティなハンドリングを追求すると、どうしても硬くなるようだ。
BEVではないが現行メルセデス・ベンツCクラスのAMGラインも、導入初期は乗り心地が硬く動きが過敏だったことを思い出す。その点、BMW・i4は当初から完成度が高く、洗練されていた。
これらのDセグメントモデルに対して、シールのプライスタグは内容のわりにかなり抑えられている。このところ輸入車が軒並み値上がりする中、この価格帯でこれほどのパフォーマンスを実現した点に拍手を送りたい。シールは新たな自動車体験を約束する。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一朗 写真/山上博也)