研修から見える、昨今の新入社員たちの特性

 内山さんは、「『フレッシャーズ・コース』(以下、FC)を活用した自律型新入社員研修」のプログラム設計を手がけるほか、FCのフォロー研修では自らが講師として登壇し(*2)、その他にも数多くの社員研修に携わっている。20年間以上も新入社員を間近で見てきた内山さんの目には、昨今の新入社員の姿はどう映っているのだろう。

*2 HRオンライン記事「この4月に入社2年目を迎えた新入社員は、“フォロー研修”で何を得たか?」など参照

内山 私が研修講師を始めて間もない90年代後半は、受講態度のあまり良くない新入社員がちらほらいました。その頃と比べると、最近の新入社員たちは “素直で真面目”ですね。年々、その傾向が強まってきているように感じます。そして、彼ら彼女たちは、“成長意欲”がとても高いです。10年ほど前からでしょうか……「成長」というキーワードが刺激になるようで、それは、全国の大学で義務化されている「キャリア教育」の影響もあるのでしょう。「成長意欲を持ちつつ、素直にコツコツと物事を行っていく新入社員」という印象です。

 私が研修プログラムを作成した「FCのフォロー研修」では、入社して半年後に「DPI(*3)」という職場適応性テストを取り入れています。その結果を見ると、「規律性」と「慎重性」が高く、半面、「積極性」「活動性」「自己信頼性」が低いという傾向に気づきます。どうやら、成長意欲はあるものの、積極的に自分から何かをつかみとろうという意思が低いようです。慎重に、失敗せずに物事を運びたいという「ローリスク・ローリターン」的な考えが根底にあるのかもしれません。

*3「職場適応性テスト DPI」(ダイヤモンド社)は、仕事への向き合い方や他者への態度、組織への順応など広い範囲をカバーしているテストで、採用場面でのスクリーニングや受検者の特徴を広く理解することに適している。

 また、入社10カ月後のフォロー研修で取り入れている「WPL(*4)」を通しては、キャリアデザインの主体性が高く、明確性が低いというデータが出ています。キャリアを考えていく意識はあるけれど、どの方向を目指しているかがあまり明確ではないようです。もちろん、これらはあくまでも平均像であり、個人差があるのですが、ここ数年の新入社員の傾向と言ってよいでしょう。

*4「WPL」(ダイヤモンド社)は、現場における人材の成長と学びの環境を「見える化」するもの。現場の学び力を向上させ、人材の成長を促進することをねらいとしている。

俳優としてのキャリアがある内山さんは、New YorkとLondonで演劇を学んだ。

 成長意欲を持っている昨今の新入社員――彼ら彼女たちの意識の中では「転職も当たり前になってきている」と内山さんは言う。しかし、「キャリアの明確性が低い」傾向を合わせ見ると、将来への具体的なイメージを持たないまま、転職を行うこともあるのではないか。

 Z世代の新入社員ならではの、他の特徴は何か?――内山さんに、さらに尋ねた。

内山 Z世代を語るときに、よく、「タイパ」(タイムパフォーマンス)という言葉が使われますが、それを感じることが研修中にあります。講師が、「〇分の時間内で考えてください」と言えば、時間をギリギリまで使って、考えをできるだけ練るためにディスカッションを重ねるのが一般的だと思います。しかし、最近は、ディスカッションをして、これくらいが及第点だろうというところまでいったら、違う話をし始める新入社員の姿が見受けられます。違う話といっても、基本は研修内容に関わることなのですが……。最後まで粘り強く続けるのではなく、ある程度のかたちができたら、余計な時間は使わないという姿勢かもしれません。