人事担当者が新入社員をフォローする方法は?

 管理職や上司はもちろんのこと、新入社員を育成するうえで大きいのが、人事担当者の存在だ。

内山 20年前くらいに比べたら、人事部の方は「とてもよく勉強している」と、私は思います。かつては、人事部の仕事の多くが前例踏襲のようにも見えましたが、最近は、特に私が知る人事部の方々はいろいろなことを吸収しようとしていて、親身に新入社員に寄り添い、一人ひとりのことをしっかり把握しています。

 そうしたなか、フォロー研修で印象的なのが、入社1年目の社員が会社に対する感謝の言葉を口にすること。「(人事部や上司が)育ててくれようとしているのに、(新入社員の)自分が貢献できていなくて申し訳ない……」と考える新入社員が少なくありません。とは言え、彼ら彼女たちの会社への忠誠心はそれほど高くない場合もあります。新入社員と職場の教育担当者や人事担当者の関係性が会社への帰属意識を左右するのですが、現場で放置されている新入社員もいるし、行き当たりばったりの指導しか受けていない新入社員もいて、企業ごとの温度差を感じます。

「職場の上司は新入社員との雑談の機会をつくることが大切」と内山さんは語る。

「会社に感謝の気持ちを持つ姿勢」は、一昔前の新入社員にはあまり見られなかったものに違いない。そうした新入社員が職場で困惑することなく、自分の成長ゴールに向かっていくために、人事部がなすべきことは何か?

内山 人事担当者には、“新入社員を育てることへの関心”が大切だと私は思います。それがあるかないかで、新入社員の成長は大きく変わっていきます。

 たとえば、入社2、3年目で配属先が変わり、上司との軋轢が生じたとしても、人事が状況をきちんと把握していれば、カバーできるはず。職場環境は、その人のパフォーマンスに大きな影響を与えます。ホープとして入社してきたのに、配属後に伸び悩む人もいれば、異動で仕事がいきいきとできるようになって、能力を伸ばす社員もいます。職場の環境や異動が原因で退職するのはもったいない。そうならないためのカギを握るのが人事担当者だと思います。

 例として、新入社員が職場の管理職とうまくいかない場合は、人事部がメンター的に間に入るのが効果的でしょう。私が研修講師を請け負う某企業では、職場をまたいだ1on1を行っています。同じ職場だと言いづらいことも、違う職場の管理職なら言いやすくなることもありますから。実践的なアドバイスを得られなくても、話を聞いてもらったり、相談できたりする機会があれば、新入社員は、その企業で働くことに安心感を覚えるはずです。