漫才師、タレント、コメンテーター、俳優、国会議員、ユーチューバーなど、数多の活躍を見せる「浅草キッド」の水道橋博士が、タレント本の書評集『本業2024』(青志社)を上梓した。博士は1時間半にも渡るインタビューで、書評で取り上げたタレントとの逸話から、忖度なしの社会批評まで、さまざまな思いを語った。記事前編では、本書出版のきっかけや、故人となった伝説のタレントたちの逸話を中心にお届けする(敬称略、前中後の前編)。(ライター 橋本未来)
「ふてほど」チョメチョメで話題になった
山城新伍がタレント本書評のきっかけ
――『本業2024』は、09年にロッキン・オン社から出版した『本業』を大幅に増補した復刊ですが、そもそも博士が「タレント本の書評」を始めたきっかけは、「山城新伍さんの名著を復刊させたい」という強い思いだったそうですね。
そうです。山城新伍さんの『おこりんぼさびしんぼ』(1998年、幻冬舎)という本が、長らく絶版になっていたので(2008年に廣済堂文庫から復刊)、それをなんとか復刊させたいと思って、雑誌の『日経エンタテインメント!』でタレント本の書評連載をスタートさせたんです。
――山城さんといえば、大ヒットドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS)で、阿部サダヲ演じる主人公が性行為を「チョメチョメ」※と呼んだことで、再び話題になりましたよね。※往年の人気番組『アイ・アイゲーム』の司会をしていた山城の決めぜりふ
山城さんって亡くなられて結構たっているので、知らない人も多いかもしれないんですが、本を何冊も出していて、どれも面白いんですよ!特に、『おこりんぼさびしんぼ』は、名優・若山富三郎と勝新太郎兄弟と、山城さんの濃厚な親交を描いた傑作です。
赤裸々な内容はもちろん見どころですが、山城さんはご自身を、「この兄弟を追っかけるルポライターでしかないんだ」と書いています。僕も、ビートたけしを追っかけながらいつか正伝を書くために芸能活動をやっているので、その部分に強く共感したんです。
山城さんって、本来は役者だけど、あれだけテレビの司会者として活躍して、バラエティーの一翼を担った人ってそうはいないですよ。でも、変な言い方だけど、たけし、タモリ、さんまのように評が書かれるわけじゃないから、時間と共に風化していっちゃうじゃないですか。だからこそ、彼の魅力を伝えたい気持ちはありますね。