実際はから騒ぎなのに
米を買えない人が続出する「なぜ」
四国で造り酒屋を営む親戚から「お米が売ってないと大阪の人が言っているけど、わが家は商売がら十分あるから送ろうか」という連絡がきました。確かに、テレビでは「米が店にない」というニュースが頻繁に流れています。
ただ、正直、実感はありません。わが家の周囲は問題なし。東京のスーパーではテレビの取材に対して、時折お客が「お米が手に入らない」としゃべっていますが、私が行くスーパーではお米はちゃんと売っています。沖縄や鹿児島はお中元に米を送る習慣があるらしく、「お土産に米を買って郵送する観光客が多い」というニュースも見ました。
政府は「統計的には米は足りている。これから新米が出る時期だから、備蓄米は取り崩さない」の一点張り。一体、米は足りているのでしょうか、それとも足りていないのでしょうか。調べてみると、日本の米政策の曲がり角から農家や米の卸売業者の課題まで、実は複雑な問題が絡み合っていることがわかってきました。
まず「令和の米不足」はから騒ぎだと言えます。理由は次の通りです。
(1) 今年(2023年に収穫されて私たちが食べる米)の作況指数は101で平年並み、コメが本当に足りなくなることはありません。
(2) 「外国人のインバウンド消費で米がなくなった」という説もありますが、月に大体300万人の外国人観光客が1週間滞在し、日本人並みに朝昼晩と米を食べると仮定しても、消費量は全体の0.5%にしかなりません。平年並みの米がある以上、十二分に市場の需要は賄えるはずなのです。
しかし、「米が買えない」と困っている人がいるのは事実ですから、これは米の流通市場の問題としか考えられません。第一に、政府が大々的に南海トラフ地震の危険性を叫び、気象庁は巨大台風の襲来を宣伝したため、家庭内備蓄のために米を慌てて買いに走った人々がいたことが原因と考えられます。
確かに、米だけでなくトイレットペーパーやレトルト食品も売れていました。ましてやこの暑さ。「異常気象で米の出来が悪い」というニュース映像ばかり見ていれば、消費者として買い溜めしておきたいという心理はわかります。「米が入荷しても早朝になくなるので、働く母親は買う時間がない。米の代わりにうどんを食べている」という主婦もテレビに登場していました。