日本人が米を食べなくなったことを理由に、国は米の需要が毎年10%ずつ減るという前提で減反してきました。足もとでも猛暑とは関係なく、米は昨年より10万トン生産量が減らされ、平均米価は2割も上昇しました。来年は3割の上昇になると予想され、取引手数料に依存する農協は大きな利益が出ます。あくまで例え話ですが、品薄状態になって値上げしやすい方が農協にとっては都合がいいのです。
実質的な減反政策を続ける国が
気づくべき米市場の構造変化
しかし、実質的な減反を続ける日本政府は、これまでの見方の前提が変わってきていることに気付くべきではないでしょうか。
今や外国人も米を食べる時代になりました。世界の米の生産量は年間約4億8000万トン(精米ベース)。そのうち日本の生産量は、年間781万6000トンで世界第10位。「日本の米は美味しい」と輸出量も増加し始め、2024年1~7月のコメの輸出量は前年同期比23%増えて過去最高となっています。
その一方、安倍政権で減反政策が廃止された後も、国が減反を促すために農家に出している補助金は3500億円で、これは税金が原資となっています。米の生産量を制限し、値段を押し上げる現在の施策は正しいのでしょうか。
さらに国は、米価維持のため20万トンの米を市場から買い上げて備蓄しており、その税金負担は500億円。また、WTOウルグアイ・ラウンドで決められたミニマム・アクセス米76.7万トンを、500億円も払って飼料などに回しています。つまり国民は、合計4500億円もの税金を国に使われ、私生活では高価なコメを買わされているのです。
しかも、実質的な減反は日本の水田面積の4割に及んでいます。仮に日本の水田面積(休耕田を含む)にカリフォルニア米並みの収穫量の米を作付けすると、長期的には1700万~1900万トンの米が生産できます。ところが、農水省と農協の目標は国内消費を基準としており、650万トン程度です。1960年以降、世界の米の生産量は3.5倍も増えているのに、日本の場合は補助金を出してむしろ4割減らしているのですから、産業構造全体を見直して輸出にハンドルを切り換えてもいいのではないでしょうか。
「減反は農家の保護と食糧自給のため」という建前ですが、実際問題、日本の農家のかなりの部分は兼業農家です。販売農家数は115.9万戸。そのうち専業農家が27.3万戸なのに対し、兼業農家 は88.5万戸と約76%を占めています。
「兼業農家」のうち、農業所得を主とする農家を「第1種兼業農家」、他の仕事の所得のほうが多い農家を「第2種兼業農家」と言いますが、第1種兼業農家は 17.7%、 第2種兼業農家は68.0%なので、本当に保護すべき純粋な農家はわずかなのです。減反で補助金をもらい、本業の収入も入るため、農業収入を大きく上回る貯蓄が可能な兼業農家が、JAバンクに多額の預金をしているのが現状です。農家が農地を宅地に転売したときも、その利益は農協に貯蓄されるので、JAは今や100兆円のメガバンクになっています。