こうして見てくると、「令和の米騒動」は「実質的な減反を今度こそやめるべき」という一大世論をつくるきっかけになりそうです。減反をやめれば、米不足は解消され、食糧安全にも寄与し、4500億円の税金負担も解消されて、米が安くなる。いいことずくめではないでしょうか。

 残る問題は、この異常気象対策です。第一の対策は品種改良で、収穫量の多い稲の開発、田植えのいらない直播き稲の開発、そして熱に強い熱帯型の稲を日本向けに改良することなどが考えられます。実際に、今でも関西の高熱地域に対応する「にじのきらめき」を増やすという対策も考えられています。 

 かつては減反政策の中で研究費もほとんど配分されなかったのですが、これからは重要な国策として取り組むべきです。中でも私が気になったのが、再生二期作。たとえば豆苗を買い、根と下半分を残して切り落とし、料理してからもう一度根の部分を水につけると、もう1回食べられる状態に成長します。これと同じことができる稲の品種があるのです。特に九州など気温が高いところでは、この方法は簡単に収穫量を増やす方法として有力とのことです。

 日本食の人気は、寿司やラーメンだけでなく、おにぎりが世界で流行するまでになりました。米が日本の主要輸出品になる日も近いのではないでしょうか。

メディアが作った米騒動
米も酒も若者に任せるべき

 そういえば、先日広島の酒造組合の会合に講演に行きました。若い人たちが大勢集まりましたが、パ.ーティで話したところによると、彼らは皆海外帰り。「マスコミはニューヨークとかロスしか行かないけれど、テキサスのようなバーボンの本場に広島の地酒屋が訪問しても大歓迎され、想像以上に売れています」と元気一杯です。

 四国の親戚も造り酒屋の経営で苦労していましたが、今やシンガポールの居酒屋でボトル2万円で売られているとか。もう、米も酒も若い人に任せてはどうでしょうか。

 実は、今回の米騒動についてはこんな苦言も出ています。前出の山下一仁氏の記事です。

「4月某日、あるテレビ局から私に、『食卓から牛乳がなくなる』という番組を作りたいとして、取材協力の依頼があった。思い付きで結論ありきの番組製作をしようとしていることは明らかだった。これは、このテレビ局ばかりではない。新聞各紙も記者の数が減っているため、記者は2年ほどの短い期間で各省庁をくるくる回る。農林水産省だけで100以上も課がある。2年くらいで、農林水産業の現状や問題点、政策の背景などを勉強できるはずがない。しかも、電話取材に代わり、『コメントだけください』という記者も出てくるようになった」

 おそらく、米の販売方法にも詳しくないであろう記者による番組作り――。「令和の米騒動」は、どうも「メディアが作った米騒動」と言えそうな気がしてきました。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)