しかし私の感覚では、米不足を訴える地域にかなり差がありました。冒頭の四国の親戚も言っていましたが、「米不足だったのはおおむね関西の人だった」とのこと。テレビのコメントでも大抵は関西の主婦などの様子を報じていますが、確かに買い溜めに走りがちな県民性と言えるでしょう。

 また、商売人の多い地域なので、店頭に出し惜しみをして値上げをする「関西商法」が行われていたことも考えられます(私も関西人なのでよくわかります)。在庫を全部放出して店頭になくなる危険は冒さず、少しずつ店頭に……というのが関西の流通事情だと推測できます(3倍に値上げしていたという店もあったそうです)。今回、これは首都圏にも見られた傾向です。

流通ルートが全て滞っているのか、
それともわざと止められているのか

 米の流通は、他の食品に比べて少し特殊です。まず生産者からJA(農協)へ。そこから卸売業者にわたり、スーパーや小売店に並べられます。統計的には米不足ではないはずなので、こうした流通ルートのいずれか、もしくは全てが滞っているか、わざと流通が止められているか、どうもそれが原因だったようです。

 というのは、多くの人々の記憶に残る1993年の「平成の米騒動」のときは、作況指数が74%と令和とは桁違いに不作で、本当に深刻な品不足が起きたからです。今回は全体的な数字から見ても、どこにも品薄になる理由がないのです。

 それに、本気で品薄を解消する気があるなら、スーパーなどの販売期限を変えればいいはずです。フードロスを調査する井出留美さんのレポートによると「おおむね精米から1カ月~40、50日で米が商品棚から撤去されている」といいます。賞味期限表示のある米の消費期限は6カ月~1年程度なのに、この販売期限は短か過ぎます。「販売期限を過ぎると、捨てるか、従業員に安く売るか、寄付するか、コメ納入業者に返品して外食産業へ回している」そうなのです。

 この基準を変えれば、本当に米が食べられなくて困っている人の品薄はかなり防げたはず。そういう手段をとったスーパーの話もなかったので、つまりは品薄状態を本気で解決しようという気持ちが流通・小売り側になかったのだと思います。

 ただし、今回はこの程度の騒動で済みましたが、これからは今年のような異常気象が常態化し、常に米の成長が阻害され、水田が水害にやられる可能性があります。この対策こそ急ぐべきでしょう。「国はそろそろ減反政策をやめて、米の増産をはかるべきではないか」と緊急提言するのは、制度・規制改革学会の農業林業分科会会長を勤める山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹を中心とする識者たちです。

 減反政策は2018年、当時の安倍政権によって廃止され、農家は地域の需要と供給を見据えながら、自らの経営判断で米の生産と販売を行うことになりました。しかし山下氏は、メディアで「廃止したのはコメの生産数量目標だけで、生産を減らせば補助金を出すという減反政策の本丸は残ったままである」と主張しています。つまり、実質的には減反政策はいまだに続いているというわけです。