「いつもの総裁選とは違う」
自民党が肝に銘じるべきこと
8月14日、突如岸田総理が次期総裁選に立候補しないと宣言。そこから、永田町とメディアは次の総裁候補は誰かという分析に熱中し、南海トラフ地震や台風のことなど忘れてしまっているかのようです。
私は、今度の総裁選びはいつもとまったく異なる要素を吟味しないと、予想は当たらない可能性があると考えています。今回の総裁選は、「フルスペック」と自民党内で呼ばれているように、党員による選挙を経て、代理人を選出し、その票数と国会議員の票数で新総裁を決定することになります。岸田総裁の任期が9月ですから、本来なら新総裁のもと解散総選挙をして、勝った政党の総裁が首相となります。
ただし大抵の場合、自民党が総選挙に勝つため、事実上自民党総裁選が新しい首相を決めるというのが今までの流れでした。そして、その流れをしっかり握り、勝つ政治家の下に集まる政治家と政治ジャーナリストが、その後大きな力を持つという構図でした。だからこそ、自民党議員や記者たちが勝敗予測に必死になるのです。
しかし今回は、従来とかなり質の異なる選挙になると私は予想しています。第一に、今までの総裁選は、選挙の顔を変えればまず自民党は勝てるという計算のもとに成り立っていました。それは、総理の支持率が落ちても自民党の支持率は落ちていないという数字に基づき、選挙の顔さえ保守層に受けがよければいいという論理で動いていたからです。
でも今回は、この数字が違うのです。総理だけでなく自民党の支持率も相当落ちています。かといって、野党の支持率が増えているかというと、そうでもありません。
たとえば、 8月5日の岸田内閣の支持率は25%で、政党支持率は自民党が29.9% 立憲民主党5.2%、日本維新の会2.4%、公明党3.3%、共産党2.6%、国民民主党0.8%でした。そして、特に支持している政党はない、いわゆる無党派層が45.7%でした(NHK 8月15日調べ)。
一方、岸田内閣の前に退陣を余儀なくされた菅内閣の場合は、当時の内閣支持率は36.2%で、政党支持率は自民党が45.2%、立憲民主11%、公明3%、維新2.5%、共産2.9%、国民民主0.6%、そして無党派層は31.3.%でした(報道ステーション 2021年2月13日調べ)。
つまり自民党を支持しない無党派が大幅に増え、新総裁が決まっても、無党派層の保守系の大半を取り戻すか、野党に無党派層をとられない戦いをしない限り、総選挙で政権を握ることなどできない可能性が大きいのです。