『旧日本軍』!?高圧的な体質が反映

 ユニクロはこの頃、明らかに名誉毀損裁判を武器にして、ネガティブな情報を封じ込めようとしていた。

 ユニクロは、海外でも私の書籍に対して訴訟を起こしている。

 日本での刊行から約半年後、『ユニクロ帝国の光と影』の韓国訳が出版されることが決まると、ユニクロの弁護士は韓国の裁判所に出向き、出版の差し止めを請求した。しかし、裁判所はユニクロの請求を棄却している。

 ユニクロと裁判まで至ったのは、私が書いた本だけである。だが、ユニクロは、雑誌記事と別の書籍に対し通告書を送付している。

 1通目は、『ユニクロ帝国の光と影』の発売後に、「ユニクロ 『入社5年目で9割が退社する柳井王国』」という記事を掲載した月刊誌「ZAITEN」の編集部に送りつけている。

 記事を執筆したジャーナリストの渡邉正裕は、こう書いている。

「文春の件で味を占めたユニクロは、訴訟を起こすことをチラつかせ、口封じのための脅し 目的とみられる『通告書』を編集部に送ってきた(2012年6月)。結果、『ZAITEN』誌上で続報を打てなくなった。これは中小出版社としては倒産リスク回避のため致し方ない。ユニクロとは財力が違いすぎるのだ」

 もう1通は、『ブラック企業』の著者であるNPO法人POSSEの代表で、一橋大学の大学院生であった今野晴貴に対してだった。『ブラック企業』には、ユニクロという社名は出てこない。「衣料品販売X社」という匿名扱いで、労働者の話を基に、どうしてブラック企業と言えるのかを分析していた。

 ところが、ユニクロは「この書籍において貴殿(今野晴貴)が提示されている『衣料品販売X社』なるものが通告人会社(ユニクロ)らを指すものであることは明らかです」、「通告人会社らに対する虚偽の事実の適示や違法な論評などを二度となされませんよう警告申し上げます」という通告書を送った。

 今野は、月刊「文藝春秋」にこう書いている。

「ユニクロが博士課程の一研究者に過ぎない私に対し、こうした法的文書を送ってきたことは正直、意外でもありました。同社の『旧日本軍』とも評される、高圧的な体質が反映しているのかもしれません」