例えば、こういう構文がよく会話に登場してきます。

「I disagree. Because~」

 英語ではまず「賛成しない」という結論を最初に言い、それから理由を述べるのが一般的ですが、日本語では逆にBecause から話し始め、「~ですよね?」と周りにまずは賛同を求めたりすることが多いのです。

 ところが、主語と動詞を意識すれば、自分はどうしたいのか、自分の意志とは何かということを曖昧のままでは語れなくなってきます。日本語は比較的、この二つを曖昧にすることで、周囲との調和をはかることに役立ちますが、この曖昧さはビジネスにおいては、「意志がない人」「何をやりたいのかわからない人」と、逆効果になります。

 自分の確固とした意見・考えを持って話せるようになるためにも、自分の言動に責任を持つためにも、主語と述語(動詞)を軸にした発想に切り替えるようにしてみてください。

 リーダーの根本的な素質に、決断すること、自分の言動に責任を持つこと、部下や他人にわかりやすく話すことがあげられます。それを親のせい、会社のせい、経済状況のせい、社会のせい、他人のせいにしていては、いつになっても自分の価値基準は生まれません。

 リーダーとしての責任範囲が広がれば広がるほど、それに比例して自分が下す一つひとつの決断が周りに大きな影響を及ぼすようになります。一つひとつの決断の重みを受け止めて、自分が責任を持って決断を下すことが要求されます。会社の方針だからとか、社長や上司が言ったからと他人任せの逃げ腰の態度では、部下に自分の決断を納得させたり、決断した方向に一緒に行動させることができなくなります。

 リーダーがコミュニケーションで気をつけなければいけないのは、自らの発言から曖昧さを排除することです。余計な推測を必要とするような中途半端な逃げ腰の話し方はやめましょう。無駄な時間を消費するだけです。はじめからストレートに自分の意見を伝えるようにすることです。そのためには、誰もが等しく判断できる話し方を心がけることも大切です。

 私はこれまで約30年にわたって外資系企業で働いてきましたが、私が部下と話している日本語を聞いていて、外国人から「だいたい何を話しているのか推測がつく」とよく言われました。

 日本語をまったくわからない外国人が、なぜ私の日本語のメッセージがわかるのかといえば、私の日本語の話し方も限りなく英語の文法に近いからです。私はほとんどの話題で、主語を「I」で話しています。また、可能な限り動詞を使って、結論を先に持ってくるようなまとめ方をしたり、句読点を頻繁に入れ、ダラダラとした長い文章にしないことを意識して話していました。例えば「私は○○に決めました。では、よろしく!」という感じです。

 いずれにしても、これは日本語の表現を否定しているわけではなく、ビジネス上は英語の文法こそが明確さを助長するという意味です。英語が話せる人も、今はまだ話せない人も、まずはSVOを心がけた話し方を意識してみてください。(第10回に続く)

次回は5月15日更新予定です。


新刊書籍のご案内

『「これからの世界」で働く君たちへ』
伝説の元アップル・ジャパン社長の40講義

伝説の元アップル・ジャパン社長が教える<br />「これからの世界」での働き方 8

この連載の著者・山元賢治さんの新刊が発売されました。これからの世界を生き抜く上で役立つ40の指針を詳しく解説しています。連載はそのうち10個を選出して掲載していますが、本では「チェンジメーカーの条件」「世界標準の武器」「サバイバル・スキル」「自分の価値観に素直に生きる」「これからのビジネスに必要なこと」「世界で戦う前に知っておくこと」などのカテゴリーに分けて、さらに多くの項目について解説しています。変化が求められるこれからの時代、世界と、世界で、戦おうとする人に参考となる内容が満載の1冊です。

ご購入はこちらから!→ [Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]

山元賢治(やまもと・けんじ)
1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。専務として営業・マーケティング・開発にわたる総勢1600人の責任者となり、BtoBの世界の巨人、ラリー・エリソンと仕事をする。2004年にスティーブ・ジョブズと出会い、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任。iPodビジネスの立ち上げからiPhoneを市場に送り出すまで関わり、アップルの復活に貢献。
現在(株)コミュニカ代表取締役、(株)ヴェロチタの取締役会長を兼任。また、(株)Plan・Do・See、(株)エスキュービズム、(株)リザーブリンク、(株)Gengo、(株)F.A.N、(株)マジックハット、グローバル・ブレイン(株)の顧問を務める。その他、私塾「山元塾」を開き、21世紀の坂本龍馬を生み出すべく、多くの若者へのアドバイスと講演活動を行っている。
著書に『ハイタッチ』『外資で結果を出せる人 出せない人』(共に日本経済新聞出版社)、共著に『世界でたたかう英語』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。