映画「パラサイト 半地下の家族」にも登場

 こうした日本側の反応を見て、韓国の誠信女子大学の教授で反日活動家でもあるソ・ギョンドク氏が「K-POPスターが歌ったことを利用して、独島について無理な主張をしている」などとコメントするといった動きがあったくらいで、あくまで日本も韓国もネット上での意見対立や局地的な炎上という印象であり、正直なところ個人的には「またか」という気持ちであった。

「独島は我らの領土」という歌は、実は映画「パラサイト 半地下の家族」(2019年)にも登場する。主人公の娘と息子がこの「独島は我らの領土」のメロディで歌を歌い、社長宅に家庭教師として潜入する際の口裏合わせの内容を確認し合うという場面にでてくるのだ。しかし、劇中で歌詞が出てくるわけではなく、替え歌のような感じで扱われていたためか(一部のネットユーザーたちからは批判があったが)大きく騒がれることはなかったと記憶している。

 確かに日本人としては、この歌は決して気持ちの良いものではなく、歌詞を耳にすると複雑な感情になることはどうしてもある。しかし、その半面で、軽快なメロディラインでノリの良い曲であることもまた否定できない事実である。

「ノリの良い曲だから」という理由?

 2010年に北朝鮮が発表した「コンギョ(攻撃戦だ)」という曲がある。「国民が一致団結して経済を活性化させていこう」というスローガンが込められ、テンポの良さや、昔の特撮やアニメソングを連想させるような曲調が YouTube界隈(かいわい)で話題となった。これも、替え歌があったり、YouTuberが歌っていたりといまだにマニアックなファンが多い曲である。

「コンギョ」の人気も、現在の北朝鮮の情勢などを見れば「不謹慎でけしからん」という声があってもおかしくないだろう。しかし、聴いている方は何ら政治的な思想はなく、ただ「ノリが良いから」「面白いから」といった感覚で聴いている印象を受ける。

 今回の「独島は我らの領土」という歌も、歌っている方は特に何も考えてないようにも思える。NMIXXのような芸能人の場合、仕事で歌えと言われた曲は仕事として歌うだけ、という面もあるだろう。

 しかし、K-POPは今や韓国内にとどまらず、世界中に市場を広げる韓国の一大文化産業である。国を越えての活動は、文化や情勢など常にリスクとも隣り合わせであると言え、不要なトラブルを避けるためには、事務所など周囲が配慮をしていくことも今後はさらに求められるだろう。

 いまのK-POPは次々に新しい世代のグループがデビューし、メンバーも多国籍であることが多い。特に日本人メンバーは増えており、NiziUのように日本人だけのK-POPグループもある。韓国人のNMIXXメンバーにしてみれば、単に子どもでも知っている有名な歌を言われた通り歌っただけで特に他意もないだろう。独島の歌を日本人が聞いたらどんな気分になるか、「反日だ」と反発するかもしれないといったことは、事務所がそういう教育をしない限り、彼女たち自身はまったく意識しないままなのではないだろうか。