韓国の場合、芸能人やスポーツ選手は活動の場が海外に広がると、マスコミなどによって広報のような存在として、ちょっとした言動があたかも「韓国の民意」のように仕立てられてしまうところがある。まして今は、常に芸能人やスポーツ選手の一挙一動が監視されるかのように、ちょっとしたささいな出来事や私生活のスキャンダルもバッシングのターゲットとなる。一度犯したミスは許されないという雰囲気、言動が本意とは異なった形で伝えられて騒動に巻き込まれることもあり、彼らを取り巻く世知辛い環境は同情すべきところである。

NMIXXと早田ひな選手の発言騒動の根底に通じるもの

 今回のNMIXXの騒動とは本質がまったく異なるものであることを断った上で、根底は似ていると思うのが、先のパリオリンピックで卓球女子でメダルを獲得した早田ひな選手の発言が炎上した問題である。

 帰国後の会見で早田選手が「特攻史料館に行きたい」という発言が注目を集め、マスコミでも大きく報道された。しかし、これが中国では「日本の軍国主義を肯定するもの」、「日本が過去にアジア諸国で行ってきた蛮行を美化している」ととらえられ、早田選手への批判と早田選手と親交のある中国の選手がSNSのフォローから早田選手を外すなど波紋が広がった(https://diamond.jp/articles/-/349159)。

 早田選手の発言を全体を通して見れば、「日常があることが当たり前ではないからこそ、戦争の悲惨さを知ることで日常があることが当たり前ではないことを感じたい」と、中国側が主張する「軍国主義の肯定」や「戦争美化」といった思想はみじんもないことが分かる。

 NMIXXや早田選手の炎上騒動は、その言動の真意やそこに至る経緯や事情といった背景は伝えられず、一部だけが切り取られクローズアップされてネットで拡散、炎上、意見対立や分断といった流れになっている点で共通している。ネット社会である現在は、他国の話題もいつでも知ることができ、瞬時に世界に拡散される可能性があり、歴史やマイノリティ-、宗教といった話題は常に対立と分断の格好のネタになる。それが有名人であれば騒動は大きくなりやすく、不毛な対立が生まれる……という事態が繰り返される。

 この夏、高校野球で初優勝を飾った京都国際についてもやはり、校歌が韓国語であり、歌詞の「日本海」が韓国が主張する「東海(トンヘ)」と訳されていたことが、SNSをはじめネット上で炎上した。一部の暴走したネットユーザーが、学校や選手を誹謗中傷する書き込みを行うなど、せっかくの快挙に水が差され、選手たちも巻きこまれた形となった(https://diamond.jp/articles/-/349641)。

「独島は我らの領土」という曲が日本人からしてみれば不快であることや、推しているアイドルがそれを歌っているのを聞けば心穏やかでなくなるのは日本人としては自然なことで、それが理由でファンをやめる人がいても責められない。しかし、前述のように芸能人やスポーツ選手を取り巻く環境の厳しさを思い、想像力を働かせれば、一概に彼らだけを非難したり、「反日」と決めつけることはできないとも思えるのである。