なにしろブルーハーツの音楽は「標準的な日本のロック・ファン」以外の層にも、きわめて幅広く受けたのだ。「人にやさしく」「TRAIN-TRAIN」「情熱の薔薇」などは、小学生までもが歌詞を誦んじたし、メンバーの似姿は『少年ジャンプ』の人気連載漫画のキャラクターにまでなった。「やさしさパンク」とも呼ばれた。
そして代表曲筆頭の「リンダリンダ」は、地方都市の女子高生がバンドを組むというストーリーの映画『リンダ リンダ リンダ』(05年)を生み、そこからインスピレーションを得た米ロサンゼルスの少女四人組バンド、ザ・リンダ・リンダズ(2018年結成)にまでつながっていった(彼女たちも、もちろんブルーハーツの「リンダリンダ」をカヴァーして、日本語詞のまま歌った)。ここまでのポピュラリティを得るに至ったブルーハーツの音楽性は、当時、おもに巷間「ビートパンク」などと呼ばれていた。