とくに後者、七五調を基本とする日本語詞の1音節に音符ひとつを当て込む、というスタイルは、70年代初頭、はっぴいえんど時代の松本隆が発明した「黄金律」に立脚している(七と五を、それぞれ「八」になるように長音符や休符などと組み合わせ、8ビートに「合致させる」という手法だ)。

 はっぴいえんどのこの達成は、その後の日本語ロックの基礎となった。RCサクセションの忌野清志郎も、この達成の上に自らの世界を構築した。そして、ちょうどこの忌野のスタイルによってバイパスされたような形で、「黄金律」をパンク・ロック構造のなかへと引き込んだのが、ブルーハーツのソングライターである、甲本ヒロトと真島昌利の2人だった。

 ここに名を挙げた4者は、いずれ劣らぬ、戦後の日本語ポピュラー・ソング史に巨大な足跡を残した天才たちだった、と断ずることができる。つまり80年代当時は、その「天才の最新形態」がまさに最前線で、大車輪で稼働しているタイミングだった、というわけだ。